Tips
5.222022
悩ましいバルーニング:パウチのガス抜きフィルターって機能してる?-2-
□ パウチのガス抜きフィルターでバルーニングは防止可能? -2-
パウチに圧力を加えると排気能力が発揮されます!
前の実験ではパウチに何も力を加えない状態での排気時間をそれぞれ観察してみました。
次にこの結果を受けて、外部から力を加えてみた場合の実験を行います。これはパウチを手で押さえてガス抜きするような状況を想定しています。
5,実験2: 加圧時の各社パウチ別排気時間比較、ランキング
各パウチに排気口を塞がないよう上から平均的に2.1Kgの荷重をかけ、90%の排気量に達するまでに要する時間を測定してみました。2.1kg荷重とはA4コピー用紙500枚1パックです。これをパウチの上からそっと乗せたまま時間計測を行いました。これをお腹に乗せてみるとどの程度の負荷をかけた場合かを実感できます。
表2を見てみると、何も力を加えない際のパウチの排気に比べ、明らかに勢いよく排気されている様子が数字に表れていると思います。前の実験で半分の空気が排気されるために2時間を要した事と比較すると排気機能を実感できるものです。
実験結果では、ホリスター社が53秒と唯一1分を切る結果となっています。それ以降は大半が90秒から180秒で90%排気に達しています。最長がイーキン社で4分弱という結果でした。2Kgではなく、更に強い力でパウチを押すことにより、このガス抜き時間は短縮できます。これを考えると、全社を通じて特別早すぎるパウチも、全く機能しないパウチも無く問題ない範囲と考えます。
この事から、就寝時にもパウチに一定の力を加えておくことで排気口からはガスが抜け、バルーニングを抑制できることが分かります。
あまり強い力ではストーマの排出機能障害を引き起こすため、程ほどの圧力をパウチに加えるような工夫がポイントです。
例えば伸縮性のベルトをパウチの上から覆うことでバルーニング現象は低減できるものと思います。
またこの効果を期待するためには、就寝前に予めガス抜きフィルターに排泄物等の付着物を取り除いておくことが必要です。
6,実験3: 排気口を5分間水に浸した場合の排気・脱気時間(2.1kg荷重時)
次に排出口のフィルターを5分間水に浸した場合のガス抜き機能の変化について調べます。
下の表3のグラフに何も濡らしていない場合と、水に浸した場合の排気・脱気時間の比較データを示します。
水に5分間浸した後では、全体的に排気時間は長くなる傾向にはあるものの、全メーカを通じ、その増加率はmax100%(2倍)程度。全く変わらないメーカもありました。平均で25%程度の排気時間の増加傾向はあるものの、浸水に対しても機能していると言えます。
実験2及び実験3のデータを下の表4に示します。
コンバテック社、ダンサック社、ビー・ブラウン社は5分の浸水では全く排気時間に変化は有りません。ホリスター社、コロプラスト社、イーキン社は微増。唯一アルケア社の排気口のみ排気時間が2倍という結果となりました。更に浸水時間を長くした場合はもう少し顕著な差が出てくるかもしれません。
7,実験4: 各パウチの排気口の1秒当たりの排気量(2.1kg荷重時)
上の表中の最も右欄に”排気口の荷重当たりの排気容量”を計算してあります。この値はパウチに2.1Kgの荷重をかけた際に排気口から1秒間に何cc排気されるかを計算した値です。各社のパウチの容量に関しては、面板の孔を塞いだままで、排出口から水を満杯になるまで入れ、その水の容量で測定したものです。最も少ないものがイーキンパウチで650cc、1番大きなパウチがコロプラスト社のアシュラで920ccと1.5倍近い容量差がありました。
結果はホリスター社が最大で排気量16.6cc/秒に対し、イーキン社が最少の2.9cc/秒と約5倍の差がありました。排気フィルターの特性を見る上での1つのデータと言えます。ただしフィルターも含めた排気口の排気能力そのものはここではあまり重要ではありません。そのパウチの容量に見合った排気時間が実現できていれば良いと考えるからです。
8、実験結果まとめ
1、排気口からの自然排気は非常に時間がかかり、排気口のガス抜き機能でパウチが萎むことはあまり期待できない。
2、よって就寝時のバルーニングは排気口だけでは解消されない(朝起きてバルーニングが生じていてもパウチの異常や汚れによるものではない)。しかしながらパウチに一定の圧力がかかるよう工夫することで就寝中でも時間をかけて排気は可能となる。
3、パウチ装着状態で排気口からのガス抜き方法は、手でパウチを押さえ込む等の必要がある。その際の排気口からの空気の抜けは、1秒間に3cc~15ccの範囲で、排気完了までには最低1分~3分程度の時間を要する(2Kg程度の負荷の場合)。
4、水濡れで排気口の排気パフォーマンス(排気時間)は-25%~-50%まで落ちる。排泄物等の付着があれば更に悪くなると思われる。
9、実験結果考察
ガス抜き・排気機能としては、どのメーカも機能していると判断します。ただし排気はあくまでもある程度の圧力を外部からかけることを前提としているのではないでしょうか。
どのメーカも自然排気だけでは非常にわずかな量しか排出されないようです。
荷重時の排気時間に関しては、45秒~150秒にかけて抜けていく事が判り、改めて排気口は機能していると言って良いと思います。
またこの時間の長短に関する考え方ですが、早く抜ければ良いかというと一概に言い切れないのではないでしょうか。
排気機能が効きすぎても、パウチの上面下面が密着し、ストーマ周辺に排泄物が溜まりやすくなったりする弊害もあります。それぞれの排気時間に関してはメーカ毎の考え方の違いが反映されているのでしょう。
排気口のガスが抜けにくいことに関しては、多くの方が実際体験されている事で、様々な場所で不満の声を聞くことが有ります。
しかしながら薄いガス抜きフィルターだけでは消臭機能に限度があり、ガス抜き機能が逆に臭い漏れとして作用すると、臭い漏れvsバルーニング対策であれば、明らかに臭い漏れの生活上の弊害の方が大きいため、一概にガス抜きだけを機能UPできない悩ましい問題が有ります。
以上
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Tipsの内容に関する件でご意見ください。より良いレポート作りの参考にさせていただきます。

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