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2.262022
面板保護テープでストーマパウチの装着期間は延ばせる?-3
□ ストーマパウチの入浴用面板保護テープの比較実験 -3(面板専用保護テープ)-
前の比較実験-2-ではロール状の保護テープ5種について防水・耐水試験を行いました。結果は、どの保護テープもテープを貼らない面板部に比べ、その効果は顕著でしっかりと水からプロテクトしてくれる様子が見られました。水分の侵入を防ぐことで装着期間は延ばせると言って良いと思います。次の実験では、面板専用保護テープに関して比較実験を行います。
比較実験3, 面板専用保護テープの浸水実験
写真3-1が今回実験に使用したテープ群です。
① moval(ムーバル): (株)共和と英国Welland Medicalとの共同開発製品だそうです。7ミクロンの極薄フィルムによる柔らかさと蒸れにくさが特徴で、透湿性、防水性を備えます。製品の保護フィルム表面には①~④までの通し番号が印刷されていて、その順番にフィルムを剥がしながら腹壁に貼り付けていきます。極薄フィルムのため、一度に剥がしたりすると皺よりが発生するためかなり注意が必要です。今回の5製品の中では最も薄い保護テープになります。
② ブラバ 伸縮性皮膚保護テープXL: コロプラスト社の製品で、先のpre実験でも使用しました。同社の従来製品より貼付面積を大きくしたことが特徴です。伸縮性に富んだクリーム色の薄い皮膚保護テープはハイドロコロイド材を使用し、透湿ではなく吸水により面板を保護します。
③ アダプト外周シール: ホリスター社の製品で、3枚で面板周囲を覆うことができます。柔軟性のあるハイドロコロイド素材を使用しており、ダンサック バリアエクステンダーと同等製品と思えましたので、本製品を代表サンプルとして選びます。この保護テープもコロプラスト製品と同様に汗、外部からの水の侵入を吸水により面板を保護します。
④ Silex シリコーン面板固定テープ:英国Trio社の製品で村中医療(株)から販売されています。シリコン素材により通気性、伸縮性に優れていることが特徴だそうです。一方防水性に関してはどこにも記述がなく、実験で確認するしてみることにします。5製品の中ではmovalに次いで薄い保護テープです。
⑤ カテリープラス™カーブ:ニチバンより提供されている高透湿性のウレタンジェル粘着剤使用した保護テープです。3枚を1セットとして保護シートに貼付されており、面板の外周長に応じて必要枚数を使用する、というものです。
3-1, 浸水実験
5種類の保護テープを写真3-2の様にEVAシートと透明PVC板に貼り付け浸水実験を行います。
実はこれ、EVAシートのみでスタートしたのですが、浸水後すぐにムーバルの剝がれが発生し、貼り付けシートの素材に問題がある、あるいはテープの表と裏を張り間違えた可能性もあると考え、急遽別のプレートでも追加実験を始めた次第です。更に接着環境を人肌、入浴時の温度に近づけるために、水温は約40度で行いました。
面板は先の実験でも水の浸透の視認性に優れたダンサック ノバ1 フォールドアップを用い(ただし今回はx5)、これにアダプト外周シールの半分(1/6周相当)を基準にカットし、各シールの長さもそれに合わせて貼り付けました。
透明なPVC板を使ったサンプルでも浸水後再びムーバル(①)の剥がれ、よれを観察、その後シレックス(④)の全面にも皺よりが発生し、水が浸透していく様子が観察されました。剥がれながらも2時間水に浸したものが写真3-3です。それぞれのテープの下の面板部分に吸水現象が発生しています。
一つ疑問に思えたことが、EVAシート、PVC板それぞれと保護テープが剝がれることに関しては、基材との相性の問題が考えられますが、面板表面との接着部が簡単に剝がれています。シレックスはそもそも防水仕様ではなかったと判断できますが、ムーバルは防水をうたっています。
結局ムーバルとシレックスは再度別に調査を行うこととし、そのまま実験を再開し、水に浸しながら50時間経った様子を写真3-4に示します。
ムーバルは5時間ほど経った際に完全にはがれてしまい、写真上にはありません。
EVAシート上の面板の様子をみると、水から保護されない周辺部は白く吸水により膨張、溶解している様子がわかります。またブラバ(②)、アダプト(③)テープの外縁部もコロイド化が進み白く変化しています。
シレックスに関しては、かろうじて貼りついてはいますが、面板を保護できず水による溶解が発生しています。入浴用防水保護テープではなく、日常装着時の剥がれ防止用テープと言った方が良さそうです。
ブラバXL(②)、アダプト(③)は3,透明PVC板の裏の写真からわかりますが。吸水によりテープ周辺部は白くなっていますが、これらテープに守られた面板はしっかり水からプロテクトされている様子が分かります。またカテリープラス(⑤)においても、テープそのものの外観の変化する様子もなく、若干テープの両端からの浸水はありますが、しっかりと面板を保護しています。50時間の浸水時間を考えるとパウチ装着期間では完全防水と言っても良いと思います。
次にシレックス、ムーバルを今度は切らずにそのまま貼り付けてみましたが、1時間後に水から出してみると先の実験と同様な結果となり、剥がれやヨレが発生しています(写真3-5)。
ムーバルに関してはメーカ、代理店に本現象を直接質問してみました。親切に対応いただきましたが、いずれも原因がわからないということで、次は素肌に貼り付けてその様子を観察することにします。
貼付は脚部に比較的小ぶりな面板を選び装着実験を行いました。
面板はビーブラウンのプロキシマ アクティブのタック性能に優れものを使用。写真3-6の1が装着後の様子、2は1時間の入浴(浸水)直後の様子、3は入浴を終え装着から12時間を経過した際の写真です。
ムーバルを貼り付けた感想は、驚くほど薄く、全く保護シールを貼っていることが分からず、手で触ってもテープの周辺部が分からないほどでした。
写真3-6の2(1時間浸水直後)ではほとんど装着後の様子と変わりません。先の実験結果とは異なり、しっかりと防水されていることが分かりました。注意深く見ると、わずかに面板側の保護テープが縮んでいるようです(a2)。
その後12時間を経過した様子(写真3-6の3)を観察すると、a1,a2,a3の変化や保護テープの内縁部の変化をみると明らかに縮んでいる様子が分かります。肌に添付されているテープ部はしっかりと貼りついたままで大きな変化は見られませんが、面板上のテープ部は縮んだり、捲れたりしています。先の実験でも気になっていたことですが、本製品は面板表面との接着が弱いようです。おそらく面板側から保護テープに水が浸入したのではないかと考えます。
3-2, 浸水実験を終えて
面板専用保護テープもメーカ毎にその面板保護の手法が異なります。
今回は入浴、シャワー時に保護テープが有効かどうかの実験でしたが、面板を剥がれから守り、その結果装着期間は延ばせると思います。
しかしながら装着期間の問題だけで保護テープの使用を全面的に推奨か、と言いますとそうではありません。今回保護テープの全製品をテストしたわけではありませんが、ロール状のテープの中にはかなり接着力が強力ゆえに皮膚刺激が強いものもあります。皮膚への刺激、相性は個人個人の使用で試されるべきものです。余談ですが保護テープの多くが(パウチ交換の際に)リムーバーを使用しても、面板程簡単にはがれないことも指摘されています。
あくまでも個々の皮膚の状態を確認した上での使用が重要かと思います。テープの中には滅菌、未滅菌の2タイプがありますから特に装着部に傷がある場合は注意が必要です。
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