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オストメイト用消臭潤滑剤を考える -1-

今回はオストメイト用パウチの消臭潤滑剤についての考察です。このTipsでは、消臭潤滑剤の一般的な概要説明から、その効用、現時点での市場の評価、国内で販売されている全社製品も個々に評価していきます


ストーマ装具(パウチ)各種

1,オストメイト用消臭潤滑剤とは

ストーマケア製品として、パウチ用の消臭潤滑剤(あるいは潤滑消臭剤と表記されている事もあります)が各社から販売されています。
一般の消臭剤が部屋やトイレ、あるいは衣類の消臭・滅菌目的に使用されるものに対し、オストメイト用消臭潤滑剤とは、パウチのバッグの内部に注入して使用するものです。

パウチの装着前に面板のストーマ孔からバッグ内部に注入したり、装着中でもパウチ排出口から注入することにより、排泄物の臭いを軽減し、かつパウチ内部に滞留している排泄物の滑りを良くすることで排出処理を簡単にすることが主たる目的の製品です。

2,オストメイト用消臭潤滑剤の効用と各社製品の選択ポイント

これら製品に期待する効用とは、
 1,消臭性(及びその持続性)
 2,潤滑性(及びその持続性)
の2点ですが、実はどの製品説明ページにも記載は無いのですが、オストメイトの排出処理時の手間を省く要素として、便器の掃除の手間の軽減も効用の一つと考えても良さそうです。オストメイトの方であれば、排出処理後のトイレ掃除を煩わしいと感じられている方も多いと思います。潤滑剤によってそれらの手間も軽減されることが期待できます。

また各社から複数販売されている製品の中からどの製品を選ぶか、については、上の1,2の有効性(以降のTipsで各社製品ごとにレポートします)の他に、
 3,安全性
 4,コストパフォーマンス
 5,使い勝手
 等が重要なポイントとなります。

“安全性”については、ストーマ、腹壁への付着の可能性があるため、各社ともにその安全性に関してはそれぞれ実証済みです。
また、それらの成分に関しては、一般化粧品に使用されている薬剤が多く使用されていることが分かりました。消臭・潤滑目的の化粧品と考えるとその安全性に関しておよそのイメージがつかめるのではないでしょうか。

これらに含まれる主な薬剤は、防臭剤、抗菌剤、防腐剤、潤滑剤、色素(着色)、香料(無香料もあります)等があります。
● 消臭剤(抗菌機能も含む)としては、10円玉の消臭効果がネットでも取り上げられていますが、その消臭効果を発揮する銅イオンを始め、柿抽出物、さとうきび抽出物、緑茶エキス、トウモロコシ抽出物等の自然由来の消臭物質の使用が多くみられます。
● 潤滑剤としては、界面活性剤(両性、非イオンタイプ)により、パウチ内部と排泄物の潤滑性を実現しています。
● 防腐剤としては、”パラベン使用”タイプと”パラベンフリー”タイプが存在します。パラベンは一般的に使用される安全性の高い防腐剤ですが、まれにこの成分でアレルギーを発症するユーザーもいることから、その選択肢があることは良いことだと思います。

“コストパフォーマンス”については、以下市販各社製品を1回あたりのコストでランキング表記していますが、このランキング以上にユーザの使用状況によりトータルのコストが大きく変わってきますので、その辺りを後ほど説明します。

“使い勝手”に関しては、これが今後の消臭潤滑剤普及の鍵を握っているといっても過言ではありません。WOCナースにお伺いすると、まだオストメイトが求めている使い勝手までは実現できておらず、現時点では積極的にオストメイトに勧めるまでに至っていない、とのご意見があったりします。本tipsでは今後これらを説明していきますが、様々な視点から改善策は存在します。

3,国内オストメイト間の消臭潤滑剤の普及率と潜在市場

現時点で定期的に消臭潤滑剤を使用している国内オストメイトの人数比率(普及率)は、その年間市場規模から弊社独自で推測すると、全オストメイト数の17%~21%程度ではないかと考えます(ドレーナブルパウチユーザ間の普及率であれば更に高いとの情報も伺いました)。これは国内全オストメイトの5人から6人に1人が使用している程度に過ぎません。

次に潜在市場を考えてみます。
この際に、オストメイトが使用するパウチで、ドレーナブルタイプ(パウチ装着中に排泄物を何度でも排出出来るタイプ)かクローズドタイプ(排出口が無く、排泄物がたまったら使い捨てるタイプです)の比率を考える必要があります。というのも、使い捨てタイプでは潤滑性があまり問題では無くなるからです。、

国内のオストメイトの使用するパウチは、圧倒的にドレーナブルタイプが多く、弊社の国内調査では80%以上のオストメイトがドレーナブルタイプ使用者です。アジア諸国でも似たような状況で、米国は日本より若干ドレーナブルタイプの使用者比率が下がります。
一方、ヨーロッパ、特に東欧のオストメイト間では排出口の無いクローズタイプ使用者が多く存在しますが、やはりメインはドレーナブルタイプだそうです。

以上から、全オストメイト人口の70%~80%は排泄物の排出時の臭いや、複数回に及ぶ排出作業に関するケアが必要、あるいは関心度が高いユーザであるということが推測できます。実はこの消臭潤滑剤、実際に使用してみるとその効果からストーマライフは改善されることが実感され、更に広く普及してもおかしくない製品カテゴリーなのです。

しかしながら、弊社では”使い勝手”に大きな問題点があると考えます。

今後のレポートでそのあたりを解説していきますが、オストメイトが求める消臭潤滑剤が実現されれば市場は現在の数倍に拡大しても全くおかしくありませんし、この潮流は今後世界に向けて拡大する可能性すら秘めています。

4,国内で市販されているオストメイト用消臭潤滑剤

ここでは市販されている消臭潤滑剤を見ていきます。
アルケア、コロプラスト、コンバテック、ビー・ブラウン、ホリスターなどの既存のストーマケア製品メーカの他、医療関連製品の販売代理店として唯一、(株)エム・ピー・アイからプライベートブランドの製品が販売されています。
ストーマ装具(パウチ)各種

各社ラインナップとして、自宅据え置き用のボトルタイプや、外出携帯用のミニパック、ミニボトル、詰め替え用、等が有ります。
注1:ホリスター社の”泡つるりん”は、その製品名から泡状の液体を想像しますが、実際は透明の液体でパウチの中で泡状に泡立てて使用するというものです。
注2:コンバテック社のニオフは、製造元はパナソニック エコシステムズ(株)のもので、ダブルブランド表記されています。

次に使用1回あたりのコストで各製品ランキングを掲載します。
ストーマ装具(パウチ)各種
それ程メーカ毎に多きな差はなく、全社横並びといった印象を受けますが、詰め替え用は多少安くなっています。一回当たりのコストでは70円~140円と2倍の差が出ていますが、携帯用を除けば70円~110円といったところでしょうか。

ただ、ここで注意が必要なのは、1回あたりの注入量で大きくコストが変わってくるということです。
大抵は1回8ml~10mlと指示書きが添えられていますが、量を多く入れたから効果抜群とか、少なめに入れたから効果が無い、という類いのモノでは無いことが悩ましいところです。
というのも、その時々の排泄物の量や成分によって大きく体感する効果に差がでてくるということです。
折角たっぷりと消臭潤滑剤を注入したのに肝心の排泄物の量が少なかった場合は、ついついもったいない、と思う気持ちも理解できます。

5,今後のオストメイト用消臭潤滑剤を考える

ストーマケア製品取り扱い代理店の方からお聞きするに、消臭潤滑剤という商材に関しては代理店として魅力を感じられているようですが、メーカ各社の取り組みには多少温度差を感じられているようでした(クローズドタイプのパウチの普及率が高い、欧州メーカが多いことに起因しているかもしれません)。

またWOCナースの方からお聞きするに、本製品群の一定の効果は認めてはおられながらも、その持続的使用、効果を自信をもって担当のオストメイトの方全てにお勧めする段階には至っていない、とのご意見も頂きました。

しかしながら、しつこいようですが、本製品群は全世界のオストメイトのストーマライフを更に改善できる可能性を秘めており、その市場はまだまだ広がると考えています。
以降のTipsで少しづつ説明していきたいと思います。

つづく



オストメイト用消臭潤滑剤を知っていますか?

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