Tips
2.42022
各社の最新ストーマパウチ紹介(イーキンドット、セラプラス、コンバテック シャロ―etc.)
新規ラインのパウチの発売に際しては、医療従事者向けに詳細資料等が配布されたりしますが、意外とオストメイトの方々の注目を集めるような製品プロモーションはあまり目にすることがありません
それ故に積極的に各社のサイトを訪問してパウチ情報を取得でもしない限り、知らないままの方が多くおられるのではと思っています。ストマケア製品は、日常雑貨等のコモディティ商品とは違い新製品発売頻度はそれほど多くありませんが、各ストマケアメーカから粛々(?)と新製品パウチが発売されています。
今回は、最近発売された新しいパウチや新たに従来製品ラインに追加されたものも含め、各社の新たなパウチを列挙してみたいと思います。過去、本サイトで紹介された製品も含め、最近のパウチメーカの動向をご覧ください。
■イーキンジャパン(株)
●イーキンドット
既にTips”各社パウチの使用レポート:イーキン”でイーキンドットに関しては詳細にレポートしていますが、イーキン社パウチとしては2番目のラインナップで、そのユニークな形状の面板は従来のものに比べ、タック性能(初期の張り付き)や腹壁への形状への追従性が大きな特徴といえます。
ストーマ周辺の腹壁にフィットするよう、写真のように縦横6か所のスリットを設けてあり、装着してみるとこのスリットがきちんと機能して、面板周辺部の皺が寄りにくい構造になっています。更にバックフィルムも材質が変更され、発泡性樹脂を使用したため、手触りも柔らかく、撥水機能も兼ね備えています。
皮膚保護剤は新開発の“skinsmart™ハイドロコロイド”で、肌に優しくしかも長期間の装着が可能になったとのことです。組成は、親水性ポリマーにCMCとペクチン、疎水性ポリマーにはPIBだけの従来タイプのものにSISを配合させているため、面板が非常に柔らかく、水を吸っても溶けません。パウチ本体(バッグ)は従来タイプとほぼ同じものです。
■コロプラスト(株)
●センシュラミオ1Convexソフト
ストーマの周辺部や陥没の深さにより、ソフト、ライト、ディープの3種類が用意されています。面板とバッグの間には左右に上下2つづつのベルトタブ(写真PH-1)が付属し、しっかりと安定的に固定することができます。
●センシュラ1
従来のセンシュラ1の面板は、濃い茶色の不透明のものでしたが、新しくなったセンシュラ1では、2段の積層構造をとり、センシュラ ミオ同様に周辺部は半透明の柔らかなものに変更されました。皮膚保護剤はCMC,ゼラチン、ペクチンと疎水性ポリマーにはPIBに新たにSIS(スチレン・インブレン・コポリマー)が添加され、柔軟性が改善されています。
■コンバテック ジャパン(株)
●エスティーム™インビジクローズドレインパウチ肌色(カスタムカット,フリーカット)
従来からの製品ラインの中長期版に加え、角の取れた菱形の面板が特徴的なパウチです。
その違いは、中長期版の疎水性ポリマーがPIBの他SISを配合しているものに対し、本面板の疎水性ポリマーはPIBのみ、と最も典型的な配合の面板が付属しています。バッグの排泄口が改善され、汚れの拡散防止、ふき取りやすさは大幅に向上しています。
●エスティーム™やわらか凸 シャロー
コンバテックというと、どちらかというと硬めの面板のイメージが強いのですが、今回の面板はコンベックスタイプにもかかわらずピークの高さ4mmから緩やかな角度でストーマ周辺から腹壁に貼り付いてくれます。薄く柔らかい面板は様々な腹壁に密着・追従し、術後直後からその後のストーマケアにも末永く対応できることが本パウチの特徴です。
表(おもて)面の排気口は、なんと7cm弱と非常に長いものに変更されています。消化器用、尿路用の2種類で、それぞれカスタムカット、プレカットが選べるラインナップがそろっています。
●エスティーム™ モルダブル
エスティームの新ラインナップ製品です。”コンバテック モルダブル テクノロジー”の採用装具だそうです。モルダブル(moldable)とは、成形/変形できるという意味で、本製品の面板ストーマ孔を指で拡げてストーマ径にぴったりと合わせることが出来ます。
更にユニークな点は、写真の最右側のように、皮膚保護剤部(モルダブルディスク)を装着時に予め取り外し、ストーマ周辺に貼り付けた後に再びパウチと接着する点です。
面板の孔径を調整できるパウチとしては、ダンサックのノバ1フォールドアップx3,x5が以前から市販されていますが、コンバテックはストーマにきちんと接着できたかを目視で確認した後、パウチを装着するという手順を取ったようです。
本テクノロジー採用装具の装着により、皮膚トラブルの改善等のdataがパンフレットに掲載されており、コンバテック社の一押し製品となるように思われます。
■ダンサック((株)ホリスター ダンサック事業部)
●ノバライフ1TRE
”各社パウチの使用レポート:ダンサック”、”各社面板の吸水力比較”で紹介済みですが、非常に意欲的な新しい皮膚保護剤を使用したパウチです。その吸水力には目を見張るものがあります(写真右)。
TREの皮膚保護剤は、親水性ポリマーと疎水性ポリマーそれぞれに新たな工夫が施され、親水性ポリマーには紙オムツに使用されるポリアクリル酸ナトリウムとカルボマーの組み合わせにより強力な吸水力を実現しました。疎水性ポリマーには2種類のPIBを使用し、長期粘着力は高分子量PIBが、初期粘着力は低分子量PIBが受け持つそうです(ノバライフ1TREリーフレットより)。
面板はフィルムというより薄紙を張り付けたような感触で、腹部にぴったりと貼りつき、様々な体勢でもツッパリ感がありません。
膨潤タイプで皮膚保護剤が溶けだして腹壁にべたべたと張り付くこともありません。ただ吸水実験では写真のように他の膨潤タイプの面板とは違いバックフィルムからボロボロと剥がれ落ちました。
■(株)ホリスター
●モデルマフレックス セラプラス ロックンロール
Tips”各社ストーマパウチ使用レポート:ホリスター”にも述べておりますが(最近の米国のホリスター社のサイトではモデルマフレックス(ModermaFlex)ブランドが無くなり、単に平面タイプ(Flat)と凸面タイプ(Convex)の表記の後にFW(FlexWear),FT(Flextend)と表示されている。
またSF(SoftFlex)はラインナップからなくなって、その代わりにCeraPlusという皮膚保護剤にセラミドを配合して保湿効果を持たせた新しいタイプが販売されている。)日本国内でもようやく”CeraPlus™”の登場です。面板の皮膚保護剤にセラミドを配合したという皮膚に優しい面板が大きな特徴です。
取り寄せてみたところ、ボックス上に丸くSeraPlusのマークがついていますが、パウチ自体の外見は、プレカット、フリーカット共に従来のFW, FT ロックンロールと区別がつきません。パウチに印刷されている製品型番で判断するしかありません。
面板は、皮膚保護剤付きのシール部分と、その周囲に入浴やシャワー時の水の侵入を防ぐ不織布に覆われた保護シールの二重構成になっており、プレカット版は皮膚保護剤部(面板)の横幅が75mm、フリーカット版は95mm、保護シールまで入れると各108mm、122mmとかなり広めになるため、ストーマの位置によっては保護シールをカットして装着した方がよい場合があります。面板保護シールは非常に柔らかいため、少しづつ張り付けていかないと皺が発生してしまいます。
新しい皮膚保護剤セラプラスは、装着後しばらくすると体温で腹壁になじみ、面板と面板保護シールの境目も分からない程柔らかな感触に変化します。交換時の面板の様子は、汗や水分を吸って半透明になりますが、粘着もなく溶解もしません。
面板以外はバッグ、排出口など従来製品と同じものになっています。
■最後に
今後しばらく面板の皮膚保護剤も進化し続け、新たな製品が市場投入されていくと思われます。
更に各社の出願特許を眺めていると、進化した未来派パウチの発売もそう遠くない将来にありそうです。パウチ自身が装着者に向けアラートを発信してくれる日が来るかもしれません。