Tips
10.222022
オストメイトの”おなら”の消音対策 -1
オストメイトにとってストーマから発生する”おなら”は深刻な問題です。
このおなら音対策を考えていきます。
オストメイトにとって”おなら音”が深刻な理由とは、①括約筋がないため人口肛門近辺の神経にかかる圧力を感知できず、本人もいつおならが発生するかどうかの見当がつかないこと、
更に②健常者のおならは背面のおしりから下方に向けて発せられるのに対し、オストメイトの場合はおならがおなかの前面から正面に向けて発せられるわけですから、対面している人がいるような場合は本当に慌ててしまうものです。
括約筋に代わるいわゆる蛇口機能がないため、ガスがたまれば自然と出てしまうという状況では、せいぜいその瞬間に慌てて手で抑え込む程度の対策しかなく、このコントロール不能のおならの音を消音・防音したいという思いは全オストメイトの願いではないでしょうか。
今回のTipsでは、おなら音の消音・防音を念頭に置きながら、ストーマから発せられるこの音に対して、何か有効な手段はないのかを考えていきたいと思います。
□ 音に関する基礎知識
また面倒な話で恐縮ですが、おならの音を考える際に、どうしても必要になる”音”そのものに関する基礎知識をまず共有したいと思います。
・音とは
そもそも音とは物の振動やこすれや衝突等によって発生するエネルギーが、様々な媒体(地上では空気やあらゆる物を、あるいは海中では海水など)を介して伝わるエネルギーの波のことで、それを耳(聴覚)で感じ取るものを”音”といいます。真空中ではその振動を伝える媒体が存在しないため音は伝わりません。
・音の性質を表すものとして、周波数、強度、速度等がありますが、”おならの音”を考える場合には、周波数と強度が問題になってきます。
・音の周波数とは、音の高い(高周波数)、低い(低周波数)を表し、一般に人間が音として認知できる周波数は20Hzから20,000(20K)Hzと言われています。
しかしながら年齢とともに高い周波数は聞き取りにくくなり、いくつかのおなら音を分析してみた結果、10KHz以上は今回は無視しても影響がないと考えます(次回のパートで説明します)。
・音の強度は、様々な条件下で求め方が変わりますが、それに近似的に比例する音圧で表すことが一般的です。人の鼓膜に受ける音圧が音の強弱と考えて差し支えないと思います。
冒頭の写真1では、youtube上にあった”おなら音サンプル”を、スマホアプリの簡易周波数分析アプリで解析してみたものです。横軸は音の周波数で、人の可聴域(20Hz:最低音~20KHz:最高音)をカバーし、最も低く聞こえる音から最も高音までを表します。
縦軸は音圧レベルで、黄色線グラフは無音時の各周波数における音圧レベルを示し、赤線グラフはおなら音の各周波数の最大音圧レベルを表します。
音圧レベルの単位としてはdB(デシベル)を使用し、グラフを見る際は、無音時の音圧から有音時に何デシベル上がったかで音の強弱を判断します。
例えば10dB上がったということは、音圧が10倍になったことを意味し、20dB上がったということは、10の2乗の100倍に、30dBとは10の3乗の1000倍であることを意味します(n0dBとは10のn乗の音圧)。
日常生活では40dB以上が上積みされた騒音(定常時50dBの道路にトラックが通り過ぎる際に90dBを示した場合)などよく出くわすものです。
数字的に考えると40dBとは1万倍の音圧になることで、数字だけみるとびっくりしますが、人の感覚は対数的と言われており、10dB, 20dB, 30dBは体感的に2倍、3倍、4倍程度の知覚レベルと捉えてよいと思います。
また音圧はその音の発生源からの距離にも影響します。点音源があったとすると、そこから四方に発せられる(球面波)音圧は、距離の3乗に反比例します。これは距離が2倍になると音圧は1/8、4倍であれば1/64になることを意味します。これも一見数字的には大きく変わるようにも思えますが、デシベル値の変化で見れば距離が2倍になっても-10dB(1/10)以下、4倍になっても-20dB(1/100)以下の減少であることが分かります。
今回のおならの考察に関しては、距離は一定で考えますからあまり役に立たない情報ですが。。。
面倒な数字の羅列になってしまいましたが、音に関する基礎知識はこの程度で十分かと思います。肝心なポイントは、音圧と周波数のグラフの見方を覚えていただくことです。
次回は様々な、おならサンプル音を調査し、それぞれ音の高低(周波数分布)や音圧にどんな特徴があるのか、またスピーカの前に様々な材質のフィルターを置いて、おならの消音・防音に役立つ素材が有るものかどうかを実験を通して考えていきたいと思います。
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