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8.182020
痛いストーマパウチ??:オストメイトの方からメールをいただきました
どういう事かと詳しくお尋ねしたところ、普段の生活ではパウチを折り曲げて収納しているため全く気にならないとのことですが、就寝時はバルーニングの心配もあってパウチを解放したままで過ごされるそうです。その際に寝返りをうったりして、姿勢によってパウチの排出口の先端が鼠径部に当たって痛い、という事でした。
確かに身長によってはパウチの邪魔になり方も違ってくるだろうと思い、数種類のパウチを取り出してみたところ、ストーマ孔の中心部から、排出口の先端までの長さに差がありました。
国内で入手できるパウチはアルケア社を除いて全てが欧米メーカのものですから、想定身長は日本人の平均身長より高く、パウチ自体も日本人にとっては長めかもしれません。
というわけで、メーカ毎の比較を行ってみます。
上の写真では全てストーマ孔のセンターを同じ位置に揃えてあります。これを見るとメーカごとではなく、同じメーカでも長さの違うパウチがあることが分かります。
平均的な長さは15cm前後といったところですが、最も短いパウチはダンサック社のノバライフ1フィットで12.5cm、最も長いものは、マーレン社のスーパーマックス/ウルトラマックスで18.8cmあります。
おそらく日本人(特に女性)の平均身長では、15cmを超えるものは長めと思われます。そのままでは普段の生活では邪魔になるケースがあり、パウチカバーや腹巻で折り曲げて収納する必要が出てきます。
ただしパウチの中には巻き上げ機能があり、排出口を折り返し、面ファスナーで留めたまま装着できるものもあります。これにより大半のパウチの長さは2~3cm短縮出来き、15cm以下の長さになります。コロプラスト社のセンシュラミオは2段階の巻き上げが可能で最大で8cmの短縮が可能です。
写真ではパウチ全体を眺めているため、最下部までの長さの差はそれほど大きなものでは無さそうに思えますが、実際に装着してみると実はこの15cmから20cmまでの間で装着感が大きく変わることが分かりました。
表1に、写真のパウチを短い順に並べその長さも記しておきます。
ホリスター社のモデルマフレックスFWやマーレン社のパウチは18cmを超え、これをそのまま折り曲げずに装着するとなると大抵の日本人の身長では邪魔になることが予想されます。
また肌に当たって痛い、ということに関しては、パウチの長さの問題の他にパウチの最下部の排出口の折り曲がった部分の形状も関係することが分かりました。
メーカにより排出口に貼付されているプレートの素材の違い(硬さの違い)、またその両端の形状の違いにより肌に触れた際の刺激の強さが違うことに気が付きます。
写真2の様に角が直角のものと、110~135度の鈍角のものでは触れた際に違いがあり、メーカによってこれらも想定した工夫が施されています。
写真3:セルケア&エスティームの排出口プレート
左の写真はアルケア社のセルケア(左)とコンバテック社のエスティームの排出口プレート部ですが、これが台形になっている理由も巻き上げた際に肌に触れる部分の角を鈍角にして刺激軽減を図るものだと思います。それぞれ向きは逆ですが、巻き上げた際には短い辺が下部になるようになっています。
最後に今回の調査で調べた他のパウチも含め、①パウチ孔から最下端部までの距離、②巻き上げ機能の有り無し、③最下部両端の形状、④最下部の硬さ、の4項目でそれぞれ評価してみました。
①については15cm以上の長いパウチ、②巻き上げ機能がないもの、③角が90度のもの、④プレートも含め、排出口を含む最下部が硬いもの。
この4項目すべてが黄色く色塗られたパウチは、巻き上げ等何も対処せずにそのままの状態で装着した場合、邪魔になる、あるいは当たり所によっては痛みを感じる可能性(あくまでも可能性です)のあるパウチです。
またベージュで色塗られたパウチも、巻き上げないと同様な現象が起こると予想されるものを示しました。
今回の考察は、ユーザの方からのメールにより簡単に行ってみたものですが、確かに”痛い”には然るべき原因がありました。パウチの容量/長さは(特に就寝時の)個人の体質による排泄物、ガスの多少によって選ばれると良いと思います。
朝起きて常にパウチの容量に余裕があるようであれば、短いものを検討されても良いかもしれません。あらためて人の肌に身に着ける装具としての難しさを知るきっかけとなりました。
以上