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11.162017
ストーマパウチ各社レポート:ホリスター
各社パウチの製品ラインアップの中から幾つか主要モデルをピックアップし、それぞれの製品の特長、各メーカー間のパウチ比較実験結果、装着・使用した際の使用感などをレポートしていきます。
Pick-upしたHollister製品:モデルマフレックス SF/FW/FT/セラプラス
■ ホリスター社の主要パウチ製品のラインアップ&その特徴・違い
製品ラインとしては、“モデルマフレックス”、”やわぴた”、”ニューイメージ”、”パウチキン”、”その他パウチ”等の5シリーズがあり、他社の様に数字で1ピース装具、2ピース装具の区別がされておらず、”ニューイメージ”が2ピース装具のラインアップである。ホリスター社の製品名は下図のようなルールで、1:製品名、2:皮膚保護剤の種類、3:面板の形状、4:排出口形状、5:パウチバッグ仕様の順番で構成されている。
“モデルマフレックス”シリーズはホリスター社の旗艦製品といって良く、皮膚保護剤は装着目安期間に応じてSF、FW、FTの三種類が用意されている。カタログ上の装着目安期間は、SF(SoftFlex)が1~4日間、FW(FlexWear)が3~5日間、FT(Flextend)が4~7日間で、面板(皮膚保護剤)以外のパウチバッグ、排出口は同種のものを使用している。最近新たにセラプラスが加わった。SFのみが溶解型で、その他は膨潤型である。
ちなみに米国のホリスター社のサイトではモデルマフレックス(ModermaFlex)ブランドが無くなり、単に平面タイプ(Flat)と凸面タイプ(Convex)の表記の後にFW(FlexWear),FT(Flextend)と表示され、SF(SoftFlex)はラインナップからなくなり、その代わりにCeraPlusという皮膚保護剤にセラミドを配合した新しいタイプとして販売されている。
“やわぴた”シリーズは、ストーマ周辺部の皺など、様々な腹壁の状態にもぴったり追従するよう6㎜の柔らかい凸型面板が付属していることが特徴のラインアップである(モデルマフレックスのコンベックスタイプは全て硬性)。更に面板周辺に保護テープが付属し(無のタイプもあり)、腹壁への装着を確かなものにする。
“ニューイメージ”は2ピース装具のラインアップ、“パウチキン”は小児用パウチ製品ラインである。
1、パウチ(バッグ)本体
各商品ラインともそれぞれ透明なパウチと、白色のパウチの上から不織布で覆った肌色のパウチが用意されている。4層構造のフィルムは、薄く非常に柔らか。カサコソ音も小さくしっとりとした手触りがこのパウチの大きな特徴である。
排気口は入浴の際にも防水用シールを必要としない耐水構造をもち、先の排気口実験では排気時間、時間当たりの排気量ともにホリスター社がNo.1であった。
不織布は、アルケア社と似ていて薄目で肌触りが良い。
2、面板
■ SF(写真H2):溶解タイプ
角の取れた逆三角形の形状で薄茶色~肌色をした半透明の面板である。最大の特徴は面板周囲1cm~2cm幅で凸凹状に加工してあることである(写真H5)。これは皮膚を保護することが目的とあり、ストーマ周辺の全ての腹壁に接着せず、一部は非接着状態に保ち、また次の装着の際には別の場所を接着して皮膚を休ませるための配慮だそうである。
装着後汗や水分を吸収するにしたがって、白濁してくる様子が面板を通して判るため、吸水進行度、寿命の見極めが容易である。凸凹構造上、周辺部の接着力が弱いのでは、と危惧したが特段短いわけではなかった。溶解タイプの皮膚保護剤は、入浴後若干面板周辺に滲みが生じるが、再び乾燥すると硬化して実用上の問題は無かった。
交換時期が近付くと(特に夏場)、面板中央部に近い皮膚保護剤が解け始めて柔らかくなってきている事が感触でわかる。
装着後しばらくすると周辺の皮膚保護剤が滲みだしてくるが、この現象を良く観察してみると、皮膚保護剤が滲みだすのではなく、パウチの重みに引っ張られたバックフィルムと腹壁に張り付いた皮膚保護剤との間にズレが生じるためのようだ。
■ セラプラス, FW, FT(写真H3、H4):膨潤タイプ
面板の直径は76mmと、他社の面板と比べても最小の部類に入る。ストーマ周辺に皺や突起があったり、骨が当たって大きな面板を装着出来ないユーザを想定しての製品だそうで、それを補うように面板の周囲に保護テープが付属している。しかしながらFWとFTの皮膚保護剤を採用した全てのパウチに保護シールが付属していることを考えると、この2つの皮膚保護剤は長期間の接着力を実現するためにタック性能(初期粘着性)を多少犠牲にし、それを補うように保護テープを付属させたのではないかとも想像できる(あくまでも想像です)。
SF, FW, FTの表面を水で濡らしてみると、SFは他社のパウチと同様に粘性が強くなるが、FW, FTは驚くほど粘性に乏しい。実際に装着した際には何ら問題なく、薄い面板が腹壁にぴったりと貼付されている実感がある。ただどの程度の強度で貼り付いているのかは周辺の保護テープに覆われていてわからない。
実際のパウチ装着では非常にしっかりと腹壁に貼りつき、剥離剤で剥がすにもかなり苦労するほどであった。剥がした後の面板を観察すると、ほとんど膨潤が認められず、粘りは若干あるがこれがどうしてあれほどしっかりと腹壁に接着しているのか不思議である。
弊社の面板吸水力実験では、FW, FTは他社の皮膚保護剤に比べ、非常にゆっくりと長時間にわたり少しづつ吸水を持続するという特徴的な面板で、これを膨潤タイプと言って良いか迷うほど膨張率は小さい。ストーマ孔周辺部の保護に関しては気になるところである。
FTの皮膚保護材は、疎水性ポリマーとしてPIBを基材としてSISを配合しているが、SISの代わりにEVAを配合しているFWとの差は実感できなかった。
(2022年2月追記)
日本国内でもセラプラスが発売され取り寄せてみたところ、ボックス上には丸くSeraPlusのマークがついているものの、パウチ自体の外見は、プレカット、フリーカット共に従来のFW, FT ロックンロールと区別がつかない。パウチに印刷されている製品型番でのみ判断ができる(パウチバッグ、排出口なども従来製品と同じ)。
新しい皮膚保護剤セラプラスは、装着後しばらくすると体温で腹壁になじみ、面板と面板保護シールの境目も分からない程柔らかな感触に変化する。交換時の面板の様子は、汗や水分を吸って半透明になるものの、粘着きもなく溶解する様子や大きな膨潤も観察されず、FT, FW同様に物静かな面板といった様子。
耐久性に関してもFw, FTに比べて遜色がない。セラミド配合による効用を直接実感できるかというと、もう少し長期で装着してみる必要がありそうだ。
3、排出口
未使用時のこの部分は、白と透明素材で統一され工業デザイン的な美しさがある。製品名についているロックンロールとは巻き上げとロック(固定)機能からの由来らしい(Rock’n’RollではなくLock’n’Roll)。
薄く曲げ加工された15mm×60mmのプラスチックプレートが表(おもて)面に3枚(P1, P2, P3)と裏面に1枚(P4)が貼り付けられている。モデルマフレックスシリーズは全て同様の構造を有しているが、何故4枚ものプレートが貼付されているのか疑問である。
想像の域を出ないが、1つ目は巻き上げのためのガイドの役割を、2つ目は面ファスナーが両方とも樹脂製であるため、しっかりと押し込むための圧着用の基盤の役割をしているのではないかと推測する。
排出口長は60mmと全メーカの中では二番目に狭い。当然開口断面積が小さいことと、2枚のプラスチックプレートで覆われるために開口形状の柔軟性も限られ、他社と比べあまり使用心地は良くない。材質も若干硬い。
イレオストミー用の排出口として、あまり開口部が開きすぎないような用途に適しているかもしれない。
4、排出口留め具
排出口の巻き上げ作業は、4枚のプレートを巻き込むために未使用の製品で試しても、かなりタイトである。原因はプレート同士が接近しすぎて貼り付けられているために折り曲げ部分にマージンが少ないことに起因している。
プレートに沿って3回巻き上げ、最後は樹脂製の面ファスナーを指で圧着する必要があるが、未使用のパウチで内部に何も存在しない状態でもきつめで、実際の使用時のように排泄物がわずかでも残留している状態では更にきつくなり、何度か巻き上げ作業が必要な場合もあるのではないだろうか。
更に面ファスナーのそれぞれの幅は10mmと小さく、10mm同士を3回巻き上げた後でコンスタントに貼り合わせる作業は実際意外と難しい。アルケア社のセルケア1が受け側の面ファスナーを幅40mmにしているのもこのような状況を考慮したものと思われる。思い切ってP1、P2を外すと、巻き上げマージンがとれ、これらの問題が解消されるではないかと思う。
以上
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