Tips
11.62017
パウチ面板の溶解タイプ、膨潤タイプの違いって?
膨潤タイプの最期って知ってますか?
このタイプの皮膚保護剤は、溶けることなくその体積は増加していきますが、細かく見ていくと膨潤タイプにもいくつかタイプが有ることがわかりました。
また溶解タイプはどんな溶け方をしていくのでしょうか?実験を通してその様子を写真で見ていきます。
各社のストーマ装具のカタログを見ていると、面板の項で、溶解タイプと膨潤タイプの記述を見ることが有ります。何だろうと調べてみると、溶解タイプとは最後は溶けていくタイプ、膨潤タイプは水を吸収して読んで字の如く、膨らむタイプ。では更に膨潤が進行したらどうなるのでしょう?各社のカタログにはあまりその先の詳しい記述はありません。
丁度弊社でパウチの耐久試験をしている最中でしたので、ついでにその調査も並行して行ってみました。
1, 実験方法
この実験は、5mm穴が複数開いた1mm厚の透明塩化ビニル版に複数のパウチを貼り付け、室温20~35℃、湿度を80%~95%に保ちながらパウチが落下するまでの様子を観察するものです。
耐久時間も興味ありますが(これは後日レポートします:“各社パウチ(面板)の耐久実験”)、面板の接皮側(腹部にあたる面です)の様子もなかなか見る機会が無いので、どういう経時変化が見えるか楽しみでもありました。
2, 実験の目的
①溶解タイプと膨潤タイプの経時変化の観察
②膨潤タイプのパウチの面板の最期(溶けるの、溶けないの?)
3, 実験経過
実験スタートから変化が見え始めるのは36時間後です。穴あき塩化ビニル板(PV板)を使用した理由は、腹壁からの汗に代わる水分を面板の接皮側に供給するためですが、両方とも36時間を経過したあたりからPV板の穴あき部分の保護剤が水を吸って白色に変化し始めます。PV板への接着部分も時間と共に本来の茶色から少しづつ白く変色していきます。
更に時間が経つにつれ段々PV板の5mm穴から水を含んだ皮膚保護剤が飛び出してきます。
下の写真は溶解タイプと膨潤タイプの113時間後の面板のお腹に接する面の様子です。
写真M1-1の溶解タイプの面板周辺は、PV板の穴から皮膚保護剤が飛び出してきています。また左下部は若干溶け始めています。
面板ストーマ孔の変化についても観察してみました。一つ前のTipsで面板の役割の一つとしてストーマ周辺の皮膚の保護と述べましたが、スタート時の面板ストーマ孔35mmに対し、113時間後の径は、写真M1-1、M2-1のように水分を吸って、それぞれ35mmよりも小さくなっています。
これはストーマ周辺部を排泄物から守る意味で重要な現象です。しかしながら既に4日以上たっているわけで、溶解タイプはピンセットでつまんでみると、伸びることなく簡単に採取でき、溶解が始まってることがわかりました。一方膨潤タイプはこの時点でもまだ弾力があり、ピンセットでつまんでも元に戻ります。(写真M2-1-1)
結局この2種類のパウチは、溶解タイプが実験開始から160時間(6日と16時間)、膨潤タイプが159時間(6日と15時間)と極めて近い耐久時間を示しました。その落ちた直後のパウチの接皮側を写真M1-2とM2-2にそれぞれ示します。
写真では溶解タイプは明らかに溶けていることがわかりますが、膨潤タイプは脱落したにも関わらず、厚みを保ちながら溶けている様子はありません(写真M2-2-1)。
更に本来であれば腹部に残る皮膚保護剤の様子を、PV板の表面に付着した皮膚保護剤の様子で見てみましょう(写真M1-3、M2-3)。
溶解タイプは腹部に相当するPV板表面に保護剤が残っています。逆に膨潤タイプの皮膚保護剤はお腹に付着することなく全く残らず、張り付いていた跡が判る角度でようやく跡が見える程度。(写真M2-3-1では正面から見えない接着跡を斜めから見てみたもの。わずかに面板ではなく保護テープの接着跡が見える)
膨潤タイプは脱落する最後まで溶けずにその形を保っていることがわかりました。
では、膨潤タイプは溶けないことから、接着力さえ落ちなければずっと使用に耐えるものなのでしょうか?
実際の装着レポートでは、ストーマ周辺部も溶けてはいないものの、触ってみると何やら凸凹とストーマ孔の縁が波打っている感触がするようになってきます。膨潤ですから水を吸って膨らむわけですが、面板の厚み方向(Z軸)のみに膨らんでいけば良いのですが、平面方向(XY軸方向)にも伸びるわけで、元々腹壁と接着していた部分との間で応力が発生してしまいます。
この力が面板を波状に変形させ、それまで張り付いてた皮膚表面との間に隙間が出来てしまいます(写真M2-2上のa)。ストーマ周辺部でうねりが出来ると、その隙間に排泄物や分泌物、水分が入り込み、更に面板と皮膚とを剥がす方向に力が働きます。これが臭い漏れや剥がれを加速しますから溶けなくともいずれ剥がれ、寿命を迎えることになってしまいます。
4, 実験結果
溶解タイプは確かに水によって溶けていきますが、膨潤タイプは溶けずに膨らんだまま、と言って良いと思います。ただし厳密に言えば”パウチの装着期間内は”、と注釈をつけたいと思います。
写真3,4に溶解後の面板、膨潤後の面板写真をいくつかお見せします。これらの写真は面板を実験的に極端に劣化させた最期の状態ですので、実際のパウチ装着の際にはこのようにはなりませんからご安心下さい。
□ 溶解タイプ
写真3の1,2,3はパウチの耐久実験の後、もはやそれぞれの皮膚保護剤が貼りつく事が出来なくなり落下した直後の写真です。溶け方はそれぞれですが溶けている事が分かります。4,5は面板のみを切り出して水に浸したままの状態で観察したものです。やはり皮膚保護剤は水をたっぷり吸った後は溶けだして、触ると簡単に形が崩れ、もはや保形できなくなっています。
□ 膨潤タイプ
上の写真の他にも追加でを行ってみました(面板の吸水実験)。
溶解タイプ、膨潤タイプの吸水後の様子は様々ですが、膨潤と言ってもいくつかタイプが有りそうです。
そのタイプとは、
①:長時間の浸水でも膨潤するだけで形を変えないもの(写真4T1)
②:吸水後溶けはしないものの保形出来なくなるもの(T2,3)
③:溶解タイプ以上に吸水能力が高く、溶けだしはしないものの最後はボロボロと崩れるもの(T3)
④:溶解タイプと膨潤タイプの中間の性質を示し、わずかに溶けだすもの(T4)
等あり、更にいずれとも言い難いシリコンゴムのような皮膚保護剤もあり、現在では一概に溶解タイプと膨潤タイプの2種類とは言い難い状況です。
ただ使用者の立場で考えれば、だからといって大きな問題が生じることはありません。タイプ云々を気にする事無く、肌との相性、接着性能、拭き取りやすさ、パウチ交換期間等で判断されたら良いと思います。
腹壁の保護という観点では一般的には溶解型の方が皮膚に優しいと言われていますが、近年膨潤型にも画期的な皮膚保護剤も開発されてきており、pH緩衝作用に秀でたものも見られます。色々な面板を試された上で皮膚保護性能と、(パウチ交換頻度等の)利便性のバランスを個々のオストメイトの方々がどう判断するか、という事です。
以上
Tipsの内容に関する件でご意見ください。より良いレポート作りの参考にさせていただきます。

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