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“拭き取り易いストーマパウチには訳がある” -各社パウチの排出口ランキング- 

ふき取り易いストーマパウチ(排出口)Ranking

様々なオストメイト用パウチを使っていると、たまに“やけに拭き取り作業が大変だなー“と思うパウチに出会う事があります。何故だろう、とその構造を見ながら考えてみました。

結論から言うとパウチの汚れやすさを左右する要因は、以下2つのポイントにあります。
 ①パウチの排出口の形状、構造
 ②パウチの留め具(面ファスナー)の素材、構造

■ ①パウチの排出口の形状、構造
排出口先端に付着する漏れは、パウチの排出口の形状、構造によって漏れが発生する場所が違うのです。更にその漏れはパウチを閉じる際の折り曲げ行為で別の場所へも転写されていきます。どの部分に移動、漏れ出していくかが第一のポイントとなります。

これを実際に未使用のパウチを手に取って排出口の汚れが転写される様子を調べてみました。“排出口の構造は、汚れの拡がり易さを左右します”。

■ ②留め具(面ファスナー)の素材、構造
どんなに排出口をキレイにしたつもりでも排出口を補強するためのプレート下に薄く残る排泄物は完全には取りきれません。この残留物が留め具の圧着作業の際に一部が漏れとして外部に出て行きますが、この漏れの量は、面ファスナー同士の圧着作業の際にどの部分をどれだけの力で圧着する必要があるかによって変わってきます。“留め具の素材や構造は、排泄物の漏れの多少に影響を及ぼします”。

今回は以上の2つのポイントについて考察してみます。

1, 排出口の構造:両綴じ、矩形の2タイプ

オストメイト用パウチの排出口2タイプ各メーカーの排出口を観察すると、写真1の様に両端が閉じられ中央部で大きく開口する両綴じタイプ(左)と、両端に短辺を有する矩形(長方形)タイプ(右)の2種類が存在することが分かります。

排出開口部は、排出作業をやりやすくするためにパウチ素材を補強する保護プレートが付属しています。この保護プレートが排出口の両端まで貼り付けられたものが両綴じタイプで、開口断面積があまり大きくとれないため、多めの排泄物の排出には時間がかかってしまいますが、水様便には向いています。

逆に矩形タイプは、両綴じタイプに比べて両端の自由度が大きく、排泄物の量が多くても柔軟に排出作業が出来ますが、水様便では逆に流れすぎて困る場合が有ります。

2, パウチメーカ各社の排出口

オストメイト用
パウチの各社排出口写真2は各社の排出口です。メーカ内ではパウチは複数種類あっても、排出口の構造はほぼ同じものを使用しているケースが大半です。

今回の考察ではコンバテック社が唯一2種類の排泄口タイプを有し、パウチによってそれぞれが付属します。同じエスティームでも従来タイプ(写真では「コンバテック2」)と後継タイプ(写真では「コンバテック1:フィルター付き」)があります。

8ブランド中3ブランドで矩形タイプを採用していますが、コンバテック社の新タイプが両綴じタイプを採用したことから、両綴じタイプが主流になりつつあるのかもしれません。

3, 漏れの発生ポイント

漏れは排泄口の表、裏の先端に沿ってライン状に発生しますが、両綴じタイプは両端が閉じられているため残った排泄物は、両端には拡がり難く、中央部を中心に漏れが広がります。
オストメイト用パウチの排出口2タイプ
一方矩形タイプは、排出口の片側の保護プレートが短く、パウチ素材が露出しているため(写真2の”a”の領域)その部分は柔らかく、留め具を強く押し留める際に圧力が加えられると、排出口外部(D1方向)へ漏れると同時に、柔らかい”a”部分にも移動(D2方向)し、ここに汚れが溜まって両端に汚れポイントが発生します。

中央部の汚れのラインは両綴じタイプと同じ条件で存在しますが、更に両端に汚れポイント(p1,p2)を作り出しています。

4, 汚れポイント、汚れラインという考え方、その転写と分散

3,の矩形タイプの排出口特有の”汚れポイント”が汚れの原因の一つですが、元々排出口先端は、表(おもて)面と裏面ともに線状に汚れが付着します。この排出口の先端をそれぞれ”汚れライン”と呼ぶことにします。

排出口を有するドレイナブルタイプのパウチは汚れラインが最低2本あるという事になります。

オストメイト用パウチの排出口2タイプ更にこの排出口は巻き上げられて留められることによって漏れを防ぐわけですから、この巻き上げ作業の際に汚れラインに接触した部分は、汚れの転写が発生します。

転写箇所は排出口の構造に依存し、汚れラインの転写も新たな汚れラインと数えると、汚れラインの数が少ないほど掃除やふき取り作業が楽だと言えます。

また汚れラインが一か所にかたまって存在する場合と別の場所に分散している場合とではふき取り作業のやり易さが変わってきます。
これを踏まえて色々なパウチを実際に巻き上げながら汚れポイント数、汚れライン数と分散箇所の数を調べたものが写真5です。
オストメイト用パウチの汚れライン比較

理想は汚れポイント数が0、汚れライン数が2、分散数が1で、これ以上減らせません。排出口の表、裏に汚れラインが1本づつ存在し、それらが1か所にまとまって存在するという意味です。

簡単な作業ではありますが日々何回もの拭き取り作業ですから簡単に済ませられることにこしたことはありません。

表で見てみるとコロプラスト社が見事に理想数を実現しています。

表右端の汚れIndex(p)は、この考察の最後のふき取り易いパウチランキングに使う指標です。

汚れポイントと汚れラインの数をもとに算出した指標で、オリジナル汚れライン数2本はそれぞれ0.5ポイントで、転写はその半分の0.25ポイントとして加算。汚れポイントはその半分で、オリジナル汚れポイントを0.25ポイント、その転写を0.125ポイントとしてその総加算ポイントを求めています。この指標は汚れの拡散度合いを示すもので、数字が大きくなるほど汚れの拡散度合いが大きいことを意味します。

5, パウチの留め具構造の考察

次に留め具周辺の構造に関して考察します。
説明の順番が逆になってしまった感が有りますが、上の4,では汚れの拡がり具合を考えましたが、この項ではパウチからの排泄物の漏れ量を比較します。
ストーマパウチの留め具構造この漏れ量を左右する要因としては、
① 留め具の接着面積
② 接着のための押込み力の強弱


が挙げられます。

補強プレート下に残る残留排泄物をどれくらいの力でどの程度の面積を押し込んでいくかで漏れ量を多少を考えます。この考察は、”1,排泄物の漏れは保護プレート下の排泄物のみが押し出される。2,プレート下には構造の如何に問わず均等の厚みの排泄物が残留する”、と仮定して進めています。

留め具の接着面積とは、面ファスナー同士の接着する面積(=面ファスナーの小さい方の面積)を実際に測定した値です。留め方については両端留めと全面留めの2種類が有りますが、全面タイプの方が押す込む面積が増えがちで漏れ量は多くなる傾向があります。


留め具の押込み強度に関しては、写真6のそれぞれに各社の留め具タイプを書き添えてありますが、2つの面ファスナーが、両方とも樹脂のタイプと、片方が樹脂で片方が化繊の2タイプが存在します。樹脂 x 化繊タイプは、強い力を加えずとも接触するだけで留め具接着が可能で、漏れを発生する要因としては弱いと考えます。

一方、樹脂 x 樹脂タイプは片方が化繊タイプの留め具とは明らかに異なり、留め具が外れないように強く慎重に押しこむ必要があり、漏れを発生する要因として作用します。


この漏れ量を示す指標、汚れIndex(a)を、接着面積×面ファスナータイプによる押込み強度と定義し、樹脂 x 樹脂タイプを1、樹脂 x 化繊タイプを0.5とします。厳密には安全に接着できる押込み力を2値ではなく測定値で行うべきですが、ここでは行えていません。ともあれこの指標が大きくなれば漏れが大きいということになります。

6, 総合汚れIndexとふき取り易い排出口ランキング

ストーマパウチのふき取りやすい排出口ランキング表2に総合汚れIndex(2つのIndexの掛け算です)とそのスコアに沿ったランキングを示します。この数字が小さいほど漏れ量も汚れエリアも少ない、ふき取り易いパウチという事が言えます。

このIndexは、排出口の構造、留め具の仕様と面ファスナーの接着面積を決めただけで、構造として自動的に算出される数字ですが、汚れ量に関する指標にはなると考えます。この数字を小さくするためには実際の保護プレートを小さくすれば簡単に達成できますが、排出時の使い勝手など別の影響が出てくるため、独自の設計が必要となります。

ランキング1位にはコロプラスト社の排出口及び留め具という結果となりましたが、2つのIndexを見てみると、汚れの拡散よりも漏れ量が少ないデザインということで全体の数値が小さくなっていることが分かります。

尚、この指標は相対比較で、傾向把握としての意味を持ちますが、スコアの絶対値比較は正確性に欠け、数字が2倍になるとふき取り易さが1/2になるという訳ではありません。あくまでも比較対象用の数字としてお考え下さい。

日々メーカの開発者の方々は、使いやすい新たなパウチの開発に励んでおられると思います。今回の考察で出した指標数字を追うばかりに、肝心の排出作業そのものがやり難くなったり、大幅な原価コストの上昇を招いては意味がありませんが、こういった見方もあるということで次の製品開発の際に多少でもお役に立てたらうれしい限りです。

以上



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