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11.22017
ストーマパウチの排気口って機能してる?
各社の上位モデルパウチにはその上部にパウチ内のガスを抜くために排気口が付属しています。実はこれ、案外機能しているかどうかの判別がつきにくいものなのです。
パウチ内にガスが溜まっていない状態が、排気口が機能しているためなのか、たまたま体内からガスが出ていないのか。またパウチの膨らみに気付いた時は、じっくりパウチを押さえて排気口からガスを出すより、トイレで排出口から一気にガスを出した方が手っ取り早いので、ここでもあまり排気口が機能しているかどうかを考えずに過ごしがちです。
恐らくパウチ内部のガスが排気口を通して抜けていく事を実感できている方は少ないと思います。逆に機能していないな、と思う時があります。
朝起きた時にパウチが膨張している、いわゆるバルーニングに気付いた時です。この現象が起きたということは、排気口が機能していないのでしょうか?
排気口内部に汚れが付着して機能していないケースかもしれません。しかし、そもそも自然にガスは抜けていくものなのでしょうか?
考えてみるといくつか疑問が湧いてきましたので簡単な実験を行ってみました。
■ パウチ排気口のガス抜きは機能している?バルーニング防止は可能?
1、実験の目的
実験1:排気口は果たして機能しているのか
1) 未使用のパウチに外部から圧力を加えない自然排気の場合
2) 未使用パウチに外部から圧力を加えた場合
3) 排気口のフィルター部分を水に5分間浸した場合
実験2:パウチメーカごとに排気口の機能に差があるのか
尚、排気口に汚れを付着させた場合のシミュレーション実験も考えましたが、設定条件が複雑なことと、結果が出たにしても実生活で役に立つ意味のあるデータになりそうにないと判断して今回は未着手です。
2、実験方法
1、面板の穴を厳重にテープでふさぎ、排出口から空気を吹き込み、しっかり封入(写真1)。
2、何も荷重を加えない場合と、パウチの上から排気口を覆わないように一定荷重を(2.1kg)を加えた場合を観察。2.1kg荷重実験では目視で80%程度抜けるまでの時間と100%抜けるまでの時間を測定。これを未使用時と5分間水に浸した後とで繰り返し行う。
80%と100%までの時間を測定した理由は、80%程度までは脱気していく様子が目視でわかりますが、最後の100%近くでは見極めが難しく誤差が生じやすいと判断したためです。また実際の使用時においては80%程度抜けていれば実用上問題ないと判断したこともあります。
3、実験サンプル
各社のパウチの中から以下を選択しました。(順不同)
①アルケア:セルケア1・TD
②イーキン:イーキンパウチ フラットドレナブル
③コロプラスト:センシュラ ミオ1、
④コロプラスト:アシュラ コンフォート ワイド
⑤コンバテック:エスティーム インビジクローズ ドレインパウチ
⑥ダンサック:ノバ1 フォールドアップ X3
⑦ビー・ブラウン:フレキシマ アクティブロールアップ Maxi
⑧ホリスター:モデルマフレックス SF ロックンロール
4、実験結果
実験1: 外部から力を加えない場合の自然排気量(%)の時間推移
何もしない場合に排気口のガス抜きが機能しているかどうかの検証です。
パウチ内に空気を満タン(パウチがパンパンの状態)に入れ、外部から圧力をかけない場合の自然排気の時間推移を測定してみました。下の表1は最初100%入れた空気が時間と共にどの程度排気・脱気していくかの様子を各社のパウチ毎に計測した値をプロットしたものです。
実験を行って見て、改めて当初の予想と大きく違ったことに驚きました。予想ではパウチに何の負荷をかけなくても(力を加えなくとも)、10分、20分程で中の空気が抜けていくものと考えていました。
ところが実際の実験では自重による排気・脱気は、内部ガスが50%減少するために早いものでも最低2時間を要する結果となりました。ホリスター社、コンバテック社、ダンサック社、アルケア社、ビー・ブラウン社がこれに相当します。コロプラスト社の2つのモデルのパウチに関しては、4時間経過しても僅かな量の排気しか認められませんでした。
これらの事から、各パウチメーカの排気口は、外部からパウチに力を加えて排気することを前提にしているか、パウチの内部気圧が一定以上上がった際に初めて排気口として機能するのではないかと考えます。パウチはお腹で多少膨れたくらいでは何もしないと排気しません。
従って就寝時などに膨らむ、所謂バルーニングが発生した際には、パウチが自然排気で萎んでいくのではなく、それ以上膨らむことを防ぐための機能と言って良さそうです。朝目覚めた際にパウチが膨らんでいるのはしょうがない事なのかもしれません。機会が有ればパウチメーカに尋ねてみたいと思います。
次にこの結果を受けて、外部から力を加えてみた場合の実験を行ってみました。
実験2: 2.1kg荷重時の各社パウチ別排気時間比較、ランキング
各パウチに排気口を塞がないよう上から平均的に2.1Kgの荷重をかけ、90%の排気量に達するまでに要する時間を測定してみました。2.1kg荷重とはA4コピー用紙500枚1パックです。これをパウチの上からそっと乗せたまま時間計測を行いました。これをお腹に乗せてみるとどの程度の負荷をかけた場合かを実感できます。
表2を見てみると、無負荷のパウチの排気に比べ、明らかに勢いよく排気されている様子が数字に表れていると思います。前の実験で半分の空気が排気されるために2時間を要した事と比較すると排気機能を実感できるものです。
実験結果では、ホリスター社が53秒と唯一1分を切る結果となっています。それ以降は大半が90秒から180秒で90%排気に達しています。最長がイーキン社で4分弱という結果でした。2Kgではなく、更に強い力でパウチを押すことにより、このガス抜き時間は短縮できます。これを考えると、全社を通じて特別早すぎるパウチも、全く機能しないパウチも無く問題ない範囲と考えます。
しかしながら貯まったガスをこの時間押さえ続けてパウチから排気するユーザは稀で、就寝時や外出時以外はトイレに行った方が早いと思われます。
実験3: 排気口を5分間水に浸した場合の排気・脱気時間(2.1kg荷重時)
次に排出口のフィルターを5分間水に浸した場合のガス抜き機能の変化について調べます。
下の表3のグラフに何も濡らしていない場合と、水に浸した場合の排気・脱気時間の比較データを示します。
水に5分間浸した後では、全体的に排気時間は長くなる傾向にはあるものの、全メーカを通じ、その増加率はmax100%(2倍)程度。全く変わらないメーカもありました。平均で25%程度の排気時間の増加傾向はあるものの、浸水に対しても機能していると言えます。
実験2及び実験3のデータを下の表4に示します。
コンバテック社、ダンサック社、ビー・ブラウン社は5分の浸水では全く排気時間に変化は有りません。ホリスター社、コロプラスト社、イーキン社は微増。唯一アルケア社の排気口のみ排気時間が2倍という結果となりました。更に浸水時間を長くした場合はもう少し顕著な差が出てくるかもしれません。
実験4: 各パウチの排気口の1秒当たりの排気量(2.1kg荷重時)
上の表中の最も右欄に”排気口の荷重当たりの排気容量”を計算してあります。この値はパウチに2.1Kgの荷重をかけた際に排気口から1秒間に何cc排気されるかを計算した値です。各社のパウチの容量に関しては、面板の孔を塞いだままで、排出口から水を満杯になるまで入れ、その水の容量で測定したものです。最も少ないものがイーキンパウチで650cc、1番大きなパウチがコロプラスト社のアシュラで920ccと1.5倍近い容量差がありました。
結果はホリスター社が最大で排気量16.6cc/秒に対し、イーキン社が最少の2.9cc/秒と約5倍の差がありました。排気フィルターの特性を見る上での1つのデータと言えます。ただしフィルターも含めた排気口の排気能力そのものはここではあまり重要ではありません。そのパウチの容量に見合った排気時間が実現できていれば良いと考えるからです。
5、実験結果まとめ
1、排気口からの自然排気は非常に時間がかかり、排気口のガス抜き機能でパウチが萎むことはあまり期待できない。
2、よって就寝時のバルーニングは排気口だけでは解消されない(朝起きてバルーニングが生じていてもパウチの異常や汚れによるものではない)。
3、パウチ装着状態で排気口からのガス抜き方法は、強めに手で圧迫する必要がある。しかしながらベストな状態でも排気口からの空気の抜けは、1秒間に3cc~15ccの範囲で、脱気完了までには最低1分~3分程度の時間を要す(2Kg程度の負荷の場合)。
4、水濡れで排気口の排気パフォーマンス(排気時間)は-25%~-50%まで落ちる。排泄物等の付着があれば更に悪くなると思われる。
6、実験結果考察
排気機能としては、どのメーカも機能していると判断します。ただし排気はあくまでもある程度の圧力を外部からかけることを前提としているのではないでしょうか。
どのメーカも自然排気は、非常にわずかな量しか排出されないようです。バルーニングが解消されるものなのかどうかの疑問は残ったままの結果となりました。
荷重時の排気時間に関しては、45秒~150秒にかけて抜けていく事が判り、改めて排気口は機能していると言えるでしょう。
ただこの時間の長短に関する考え方ですが、早く抜ければ良いかというと一概に言い切れないのではないでしょうか。
排気機能が効きすぎても、パウチの上面下面が密着し、ストーマ周辺に排泄物が溜まりやすくなったりする弊害もあります。それぞれの排気時間に関してはメーカ毎の考え方の違いが反映されているのでしょう。
排気口のガスが抜けにくいことに関しては、多くの方が実際体験されている事で、様々な場所で不満の声を聞くことが有ります。しかしながら薄いガス抜きフィルターだけでは消臭機能に限度があり、ガス抜き機能が逆に臭い漏れとして作用すると、臭い漏れvsバルーニング対策であれば、明らかに臭い漏れの生活上の弊害の方が多いため、一概にガス抜きだけを機能UPできない悩ましい問題が有ります。
以上
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