Tips
8.262019
コロプラストジャパン本社を訪問!
弊社では様々なパウチを独自に調査しておりますが、この度オストメイト用パウチで国内No.1シェア(“弊社調べデータ”)のコロプラスト(株)へコンタクトさせていただいたところ、コロプラストジャパンの本社に訪問させていただく機会を得ました。
様々なコロプラスト社の製品に関してお伺いさせていただきたくお邪魔したのですが、新製品のコンケーブについてのお話が実に面白く、驚くほど細かな点に配慮され開発を手掛けられていたので、一度その辺をこのTipsコーナーでも紹介させていただきたい旨お願いしたところ、ご了解いただいたのでちょっと記事にしてみたいと思ってます(今回は敢えて取材のような体で書き進めてみたいと思います)。
なかなかこのような情報はWeb上でも存在せず、恐らくオストメイト向けの会合等でもこれほど長時間にわたり細かくお話を聞く機会は無いのではと思います。コロプラスト社の皆さま、改めて貴重なお時間を戴きありがとうございました。
本社は、九段の内堀通り沿いにあるイタリア文化会館の最上階にオフィスを構えられているのですが、エレベータで上がった先のきれいなエントランスはコロプラスト社の企業イメージのままで(5月の初めての訪問時)、8月はそのエントランス部分のみリノベーション中でした。何でもスタッフ数の増大に伴い、業務スペース確保のための処置とのことで、9月に完成予定ということでした。完成後の写真は後程UP出来たらと思っています。
今回ご対応いただいたのは、コロプラスト社の日本国内におけるマーケティングの責任者の方で、様々な国内のユーザプロモーションなどを手掛けられている方でした。デンマーク本社の歴史や企業理念などもお伺いしながら様々な製品に関して質問させていただきましたが、中でも感心させられたのが、昨年新製品として市場に投入されたセンシュラ ミオ コンケーブに関してでした。
弊社の今迄各社のパウチ調査では、あくまでもユーザ視点にたっての評価(“コロプラスト社のパウチレビューはこちら”)でしたので、開発サイドではどんな視点で製品開発されているのか極めて興味深いお話でした。また企業サイドからは、こういったパウチ開発からのお話をユーザの皆様へ広く直接お届けするような機会が無いのだとの事で、今後は開発メーカの方々から同様な面白いお話を伺えたらと思いました。
センシュラ ミオ コンケーブの開発背景
見せていただいた製品パンフレットによると、オストメイトの方々のストーマ周辺のお腹の形状は、平らの方が53%、凹んでいる方が13%、膨らんでいる方が34%だそうです。従来の製品は、他社製品も含め、ストーマ周辺部が凹んでいる方向けには、面板のコンベックス(凸型)モデルが多数存在するのですが、周囲が膨らんでいるお腹に対しては、平らなお腹の方と同様にフラットな面板のみという状況でした。
しかしながら膨らんでいるお腹の方がフラットな面板を張り付けた際には、面板の周辺部に皺が寄ったり、ストーマの形状やその周辺の腹壁が体位により変化したりして、きちんとした装着が出来にくく、面板の周辺部にハサミで切り込みを独自に入れたりして対応されている方もおられます。センシュラ ミオ コンケーブは、ストーマ周辺部がポッコリ出っ張ってしまった方や傍ヘルニアの方にフォーカスした製品なのだそうです。
弊社のパウチホルダーもその様な方向けなのですが、面板そのものの形状が膨らんだお腹を包み込む、というコンセプトの製品なのだそうです。これはデンマークの開発陣が、人の手が石を持ち上げる際の手の形状をヒントに造られたものだそうで、確かに形状はかわいい5本の指に相当する5角の星型をしています。筆者は思わず海中のタコが石に足を絡めてしっかりとつかまっている様子を想像してしまいました。
コンケーブの新規性
コンケーブは、パウチ(バッグ)部分は従来のセンシュラミオシリーズと同様と思われますが、面板に画期的なアイディアが盛り込まれています。
Point1:面板の凸面形状
何といっても、まずはこれが大きな特徴で、星型形状に関しては、ビー・ブラウン社が、花びら型と称した面板を有するパウチを既に販売されていますが、本製品の特徴は、お腹の膨らみにぴったりとフィットするような3D形状を有していることにあります(図2)。
この面板は中心部と周辺部の2つのエリアに分かれ、ストーマの周辺部の直径60mm内はフラット形状で、そこから周辺部に向かって凸面形状になっています。お腹に貼り付ける際は、反対側にそらした状態で貼り合わせます。そうすることにより、ストマ周辺部をまず接着固定し、そこから貼り付けはじめ、面板周辺部が最後に貼り付けられるというように同心円状に貼り付けていくという装着プロセスが自然ととれるようになっています。
Point2:面板のストーマ周辺部
ストーマ周辺部直径60mm内の平面部には改めて説明されないと気付かないようなユニークなからくりがあって、一つ目は、皮膚保護剤の反対側(パウチ側)に直径60mmのやや硬いリング状の樹脂が装着されています。これは“スタビリティリング”というらしく、装着時には、このリングを目安にしっかりと指で圧着することが出来るというものです。
更にリング内のエリアは、本来ある伸縮性を敢えて犠牲にし、体勢を変えた際のストーマや周辺腹壁の形状変化を押さえる役割をはたし、より一層安定した貼付を目指すというものだそうです。また、ストーマ周辺部の面板の表面をよく観察するとわかるのですが何重にも同心円状の波状構造が形成されています。この構造により、更に安定した装着を目指すのだそうです。
Point3:その他の気配りポイント
保護シールの周辺部(図4)をみてみますと、細かな溝が周辺部にあることが判ります。しかもシールの周辺部に合わせて溝のピッチが変えられていて、腹壁への接着力を増強するための涙ぐましいほどの配慮が感じ取られます。
その他、写真(図5)のように面板の保護シールの上の部分が青くなっていますが、普段何も意識せずに使用していますが、実はこれキッズ用パウチでは、上部ではなく、少し傾いた位置についているということ。このマーカ、実はこの部分を体の頭部方向に向けて貼るためのマーカだそうで、子供はストーマから鼠径部(そけいぶ:足の付け根)までの距離が短いため、敢えて斜め装着するために、この位置にマーカを付けているのだそうです。恐らくここまで気付くユーザはいないのではないでしょうか。
現在はパウチの表面がクリアな製品しか販売されていないのですが、世界では既に不織布(?)で覆われた不透明版もあり、要望が有れば国内販売も検討されるという事でした(2020年2月追記:現在は不透明版も入手可能です)。
取材を終えて
非常に意欲的な製品が発売されたと実感しています。実際に開発企業はここまで細かなことを考えながら製品開発をやっておられるのかとびっくりしました。
同時に、画期的な新製品なのですが、敢えてユーザ側の要望としてお伝えすると残念な点が一つあります。それはパウチと面板との接続部分の径(弊社では接合面径∮と呼んでいます)が70mmと、比較的大きい事です。
コロプラスト社の製品全般に言える事なのですが、この接合面径が大きめです。ストーマ径が大きい方もカバー出来ることからの仕様決定だとは思うのですが、別バージョンとしてストーマ径の小さい方向けに、スタビリティリング径を現在の60mmから45mm~50mm程度に抑え、接合面径を50mm~55mm程度の別バージョン製品をラインアップしていただけたらと希望します。
特に本製品のコンセプトがストーマ周辺部の腹壁がポッコリと膨らんでいるユーザ向けなので、パウチと面板の接合部にベルトタブを付けて、ベルトでポッコリと膨らんだお腹を矯正したり、弊社のパウチホルダーのPH50、PH65が使用できると、ストーマの近傍からしっかりと腹壁を押さえることが可能になるものと考えます。一度改めてご相談してみたいと思います。
また今後次の興味としては本製品のユーザによる実際の使用感に関してです。はたしてこのきめ細やかな配慮、設計が、オストメイトの方々がどの程度体感できるのか、どの程度効果的なのか、特に大きな差が無いのか、等々一度弊社モニターにお願いして、装着モニターテストを実施してみたいと思っています。
以上
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