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市販の臭いセンサーでパウチから漏れ出す臭いは検知可能?

市販の臭いセンサーでパウチから漏れ出す臭いは検知可能?
こんな質問をお受けしました。

強い体臭、口臭が有っても当の本人は気づきにくいことと同様に、パウチから臭いが漏れ出していても自分では気付かずに過ごしているかも、と不安に思うことがあるのではないでしょうか。

臭いセンサーを調べてみると市場には安いものでは1000円程度の携帯用から高いものでは数十万円もするものまで販売されています。これらセンサーを使って他人に気づかれる前に臭い漏れが検知できるものでしょうか?

今回のTipsでは、パウチ(排泄物)から漏れ出す可能性のある臭い関して、以下1~3について調べてみました。
1,パウチから漏れ出す臭い成分とは
2,市販の臭いセンサーとは何の臭いを検知するものか
3,携帯型臭いセンサーでパウチから漏れ出す臭いを検知できるか

まずは1,パウチから漏れ出す臭いについて調べます。

1,パウチから漏れ出す臭い

表1では日常生活の中で感じる臭いとその物質名、表2ではその中でも多くの人が不快に感じる臭いとその原因となる物質に関してネットからアクセスできる情報がありました。
臭いの種類

表中にも一部ありますが、体臭にも様々な部位から発生する臭いがあり、足の裏からは(吉草酸による)足の裏独特の臭いが、脇からは(3-メチル-2-ヘキセン酸やビニルケトン類の)ツンとした酸化臭が、頭皮は皮脂腺や角質細胞が剥がれ落ちたフケ、毛髪の周囲のニオイの吸着・凝縮による(アルデヒド類や脂肪酸による)独特の臭いが、加齢臭は加齢に伴い(皮脂成分にパルミトオレイン酸や過酸化脂質が増え、ノネナール等)加齢独特の臭いを発します。このように我々の体からは様々な物質が体臭として感知されます。

便の特有のにおいの主成分は、「インドール」や「スカトール(3-メチルインドール)」と呼ばれるもので、摂取したたんぱく質が(ウェルシュ菌などの)悪玉菌によって分解、腐敗発酵されるときに出る物質だそうです。インドールは濃度が濃い時には強力な悪臭を放ちますが、希釈するとジャスミンの香気成分として香料などとして使われます。

更に「インドール」や「スカトール」の他にも排泄物には吉草酸(足の裏の臭い)、硫化水素(卵の腐った臭い)、メチル・メルカブタン(歯周病のにおいの主成分で腐った玉ねぎのような臭い)、ジメチル・サルファイド(都市ガスなどは敢えてこの臭いを着臭)、アンモニア(尿の臭い)など様々な悪臭の原因となる成分が含まれます。

またこれらの臭いは、加齢とともに
1)、消化吸収力の衰えによる未消化物の増加、
2)、腸内の悪玉菌の増加、により悪臭を放つ成分が増加し、臭いはより強くなる傾向があるそうです。

2,市販の臭いセンサーとは何の臭いを主に検知するものか

それでは市販の臭いセンサーはどんな臭いを検知するための物なのでしょうか。
携帯型かつ廉価な臭いセンサーは、口臭チェックやアルコールチェックなどの用途として販売されています。これらは元々は都市ガスやLPガスなどの家庭用ガス警報器に使用されている半導体ガスセンサーを応用した製品です。

ガス(臭い)センサーには,この半導体方式の他,化学反応式,接触燃焼方式,水晶振動子式等複数有りますが,小型軽量,低消費電力,長寿命等のメリットから半導体方式が最も広く普及しているようです。
この半導体ガスセンサーとは、臭い(ガス)が半導体表面に当たると、その濃度によってセンサー表面の抵抗値が変わり、それを変換した数値に置き換えて表示するというものです。

それぞれの用途により、口臭チェックは主として硫化化合物濃度をアルコールチェックは酸素濃度を測定するものですが、実は他のガス(臭い)成分にも容易に反応することから、精度の面ではいまだ発展途上の感が有ります。

そんな中、2019年に第一精工と凸版印刷が発表した「noseStick」は、スマホ用デバイスとして、複数のガスセンサーの表面上に異なる臭いフィルター(各種感応素材)を積層することで、数十種類の臭いの判別が可能になるというもので、近い将来発売される見込みです。

話を戻しますが、現在市場に出回っている口臭チェッカーの比較記事を見つけましたので興味のある方はご参照ください。
【徹底比較】口臭チェッカーのおすすめ人気ランキング7選【2021年最新版】
(https://my-best.com/511)
実は残念ながら、本記事で一番評価が高く、体臭チェック用にも使用できたコニカミノルタ社の「Kunkun body」を購入するため調べたところ、本年1月をもって販売終了とのお知らせが出ていました。
【重要なお知らせ】「Kunkun body」本体の販売は2021年1月29日をもって終了致しました。
(https://kunkunbody.konicaminolta.jp/news/media/210129/)

口臭の原因となるのは、先に述べた硫化水素(卵の腐った臭い)、メチルメルカプタン(腐った玉ねぎのような臭い)、ジメチルサルファイド(都市ガス臭)などの揮発性硫黄化合物ですが、半導体ガスセンサーを使用した多くの口臭チェッカーは、これら口臭物質だけでなく、他の臭い(食品、アルコール、たばこ、歯磨き粉、マウスウォッシュの香料)の濃度が高い際にも反応するようで、具体的にどの成分の臭いかは判別が難しいようです。
しかしながらよく考えてみると口臭とは違いパウチ周辺からの臭いは限定的でインドール、スカトールの臭いを検知できれば良いわけですから、あとはパウチから漏れ出す微妙な臭いに反応するかどうかがポイントのわけで、実際にその感度に関して実験してみます。

3,携帯型臭いセンサーでパウチから漏れ出す臭いを感知できるか

ブレスチェッカー画像
使用したチェッカーは、記事の評価で2番目に高かった”Ishino新型 口臭チェッカー”を取り寄せて実験してみました。非常に手頃な価格(1,480円)にも関わらず表示されるデータの再現性が高いことで評価されています( 実際に使用してみると、再現性が高いと評価されている本機でも測定のタイミング等によって結果が違うことが何度かありました)。
注文後1週間ほど要しましたが、写真のブレスチェッカーが届きました。

計測結果は5段階で表示され、レベル0が臭いを感じない状態、最大のレベル4は強い臭いを感じる状態です。
人間の感覚は対数的と言われていますので、レベルが1つ上がるとガス濃度は数倍~10倍程度上昇している可能性があります(半導体センサーの抵抗値とガス濃度との特性によりそのステップは不明ですが)。

説明書を読んでみますと、シンプルな筐体にもかかわらず、正確な測定データを得るために測定環境には細かな制約が有ることに気づきます。
 1,アルカリ電池限定(マンガン電池や充電用は×):小型化、低価格化のため、半導体センサーを含む電気回路の電圧を一定に保つための定電圧回路を省いた結果です。
 2,製品寿命:メーカー保証は1年間または500回以下の使用回数
 3,10℃以上の気温差のある環境へ移動した際は2時間以上放置
 4,呼気はセンサーから5mm~15mmの近距離で4~5秒吹きかける
 5,歯磨き、オーラルケア後は40分~1時間後に測定
また、取扱説明書にはしきりとセンサーキャップを引き上げたり、おろしたりの表現が有るのですが、このキャップは見当たりません。

本機は、本来であれば本体中央部のセンサーにガス(呼気)を吹きかけて測定すべきものですが、パウチの臭い測定に使用できるか否かの実験ですので、ガスが半導体センサーに自然吸着する環境で実験してみました。

 表3に今回測定した様々な臭いのレベルを報告します。まずはいくつかの室内の臭いを確認しましたが、無臭にも関わらず何度やっても測定値が1を示す部屋が有りました。その差は室温の違いで、5分程度時間を置いた後の測定値は0を示しました。試しにヘアドライヤの温風を当ててみたところやはりレベルが上昇しましたので、温度上昇によりセンサーの抵抗値が変化しているものと思われます。

室内の臭いで最大を示したものは、バスルームの洗面台にあったアロマディフーザーの近くで測定したものでレベル2を示しました。またトイレでレベル0の状態から、パウチ面板のリムーバーで唯一芳香成分を含んだイーキン社のReleaseの噴霧直後でレベル1を示しました。

センサー臭いデータ
次いで本来の口臭チェックに関してですが、歯磨き直後、コーヒーを飲んだ直後はレベル2を、マウスウォッシュや喫煙直後は最大のレベル4を示し、その後30分程経過した後は元に戻りました。

次いで酢の原液(15cc)の臭い測定をしてみたところ、センサーから1cmのところで3~4、5倍~10倍希釈でレベル2~3を示しました。原液からの距離を離して測定した場合、2cm離してレベル1、5cm以上でレベル0でした。酢に関しては自然吸着でも検知することが分かりました。

そしていよいよパウチからの臭い検知です。
まず装着中のパウチの面板や様々な部分にほぼ接着するような状態で臭い測定を行いましたが、何度やっても全てレベル0でした。臭い漏れしているような状況ではないため、当然と言えば当然です。

次に「インドール」や「スカトール」の感度の有無を調べるため、パウチ排泄口を開け、そこへセンサーを近づけて測定してみました。
結果は1cmの距離では3~4ときちんと反応していますが、5cm以上になるとレベル0と検知出来ません。何度も測定を繰り返しましたが、同じ結果となりました。

4,結論

市販されている臭いチェッカーの一つだけの実験ですが、濃度の高い「インドール」や「スカトール」に関しては反応している可能性はあります(その他臭い成分との反応の可能性も残ります)。
しかしながら排泄口を開けた状態でも1cm~2cmの超近距離できちんと反応するにとどまり、5cm以上では検知出来ない状況では、微妙な臭い漏れセンサーとしては機能しないと判断せざるを得ません。

因みに人間の嗅覚では、スカトールを濃度1000億分の1%(10ppt)でも感知することが出来るのだそうです。
今回のセンサー寿命は500回か、1年間のどちらか早い方ということで、完全に還元反応ができずに寿命を迎える半導体センサーを考えると、改めて100年以上稼働可能かつ感度の高い人間の嗅覚の優秀さに感嘆させられます。

以上

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