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2.82022
面板保護テープでストーマパウチの装着期間は延ばせる? -1
□ ストーマパウチの入浴用面板保護テープの比較実験 -1(予備実験)-
パウチの面板は装着後しばらくすると剝がれてくる場合があります。
この剥がれがパウチの装着期間を短くする要因の一つとも考えられます。
剥がれの原因としては、衣服等による擦れ、腹壁からの発汗、更に入浴やシャワー時の水の侵入などが考えられます。
その剥がれを防止する面板保護テープが各社より販売されていますが、これを貼り付けることにより、特に入浴時などにどの程度面板の剥がれ防止に効果があるものでしょうか。
今回はこんな単純な発想から比較実験を始めてみたわけですが、なかなか比較データが取れるような実験環境が作れずに多少沼にはまり気味です。これらの実験経緯もお見せしながら本Tipsへの掲載です。
最終的に意味のある比較データを取得できるかどうか現時点ではまだ確信は持てませんが、面板保護テープに関しての多少の理解には役立つと思っておりますのでご覧ください。
1-1, 面板保護テープの3分類
一言に面板保護テープといっても用途をよく見ると3種類に分かれます。
(ⅰ) サージカルテープ:
日常生活の中で衣服による擦れや短時間の入浴・シャワーなどの水の侵入を防ぐためのテープで、剥がす際の低刺激をうたったものが多くあります。
(ⅱ) 防水テープ:
外見はサージカルテープのようなロール形ですが、シリコン素材などを使って透湿/防水性を備え、入浴、シャワー時にも面板を保護してくれます。
(ⅲ) 面板専用保護テープ:
面板周辺の形状に沿って貼り付けるシールで、内部からの汗の吸収や伸縮性をもち、皮膚保護剤にハイドロコロイド系を使用したものがみられます。
1-2, Pre実験
まずは保護テープの傾向をつかむために、(ⅰ)、(ⅱ)、(ⅲ)の中からいくつかピックアップ(表1)して、簡単な事前実験を行ってみました。透明のPVC(塩ビ)板にパウチを貼り付け、その面板周辺に各種保護テープを貼り、40℃の浴槽に入れたまま時間ごとに観察していく、というものです。透明板を用いることで裏表から剥がれ具合が観察できます。
(ⅰ)のサージカルテープの中からはニチバンの”スキナゲート(①)”とニトムズの”優肌絆 アルファ(②)”を選択。”スキナゲート”はフィルム、粘着剤ともに透湿性があり、テープには全面小さな孔があり、手で簡単に伸ばしたり、切ったりすることができます。
“優肌絆 アルファ”は、肌色の伸縮性のあるプラスチック(ポリオレフィン系)フィルムですが、これもテープには微細な孔加工がされているためタイプ(ⅰ)としました。
従来製品に比べ剥がす際の肌の角質の剥離量を減らしたことが特徴です。(2022年2月22日追記)優肌絆アルファをその後の実験でも使用していますが、防水性があることが判明しました。表1を修正し、タイプ(ⅱ)、防水性〇有りです。
(ⅱ)の防水テープからは両方3M製ですが、④の “Micropore™S やさしくはがせるシリコンテープ“は英国に本社を置くMicropore社からのライセンス製品です。ブルーのポリエステルテープで表面はエンボス(凸凹)加工が施されています。
伸縮性に関しては5種の中では最も小さいものでした。”ブレンダーム(③)”は半透明ポリエチレンフィルムで空気や水分を遮断するとあります。
(ⅲ)の面板専用保護テープからはコロプラスト社の伸縮性皮膚保護テープXL(Brava Elastic Tape XL)を選びました(⑤)。ドーナツを半分に切ったようなユニークな形状で、従来よりある同社の他製品より接皮面積を大きくしたことが特徴です。伸縮性に富んだクリーム色の薄い皮膚保護テープで透湿ではなく吸水性を持たせたことで面板を保護します。
実験に使用するパウチの選択では、特に意向はありませんでしたが、ブラバXLのパンフレットにセンシュラ ミオ コンケーブの補強に最適とありましたのでコンケーブを使用することにしました。そのコンケーブを写真2のように透明PVC板に張り付け、その面板周辺部を5種類のテープで保護します。参照比較用に何も貼らない部分も設けてあります。
これを写真3のように40℃のお湯に浸したまま(実際にはパウチを沈めてきちんと浸水させています)、時間経過による各保護シールの様子を観察します。
入浴時間は現実的には1回大抵1時間以内でしょうから、長時間お湯に浸すことで加速実験ができると思っていました。
そこで1時間ごとに浴槽に沈んだパウチの剥がれを観察していましたが、これがいっこうに変化の様子を見せません。
結局この実験では40℃のお湯に30時間浸したまま経過を見ましたが、ブラバXL以外は全く変化がありませんでした。
XLは7時間を超えたところで徐々にテープの周辺部から吸水による膨潤が始まり(写真4)、テープ幅が徐々に細くなっていきました。以降は時間とともに膨潤が進行し、お湯がに少しづつ濁り始めたことから、若干の溶解もあると思われます。
30時間たっても剥がれ現象が観察されなかったことで長期実験を覚悟し、お湯から引き揚げ室温の水を張ったバット内で更に浸水試験を継続しました。
写真5は水に浸して160時間を超えた面板、保護テープの様子です。面板の剥がれもあまり無い様子ですが、個々について見てみたいと思います。
写真5-1:スキナゲート、優肌絆、a:3M Sシリコンテープ
1,スキナゲートのテープ自体に若干の剥がれが見られます。
2,防水性の無い①スキナゲートや②優肌絆でも保護テープのない部分に比べ、面板周辺の水の侵入が少ない結果となっています。
写真5-2:3M ブレンダーム、3M Sシリコンテープ
1,ブレンダームは、テープ周辺以外はほとんど面板の剥がれが見えません。きちんと防水できていることが分かります。
2,Sシリコンテープで保護された面板では若干の剥がれが観察されます。
写真5-3:ブラバ伸縮性皮膚保護テープXL
1,保護テープは吸水により大きく膨らみましたが、そのテープにより守られている面板の剥がれはわずかで、テープの特性は他とは違いますが面板保護という意味ではその役割を果たしていることが分かります。
写真5-4:160時間後のXLの膨潤の様子です。膨潤後の溶剤は適宜取り除いていたため、実際の膨潤物質は更に増えます。ただし現実的には、これだけ長期に渡り浸水するような状況はないため、あくまでも実験上の特性調査結果です。
1-3, Pre実験を終えて
今回の実験ではわずかな面板保護の様子は見て取れましたが、それぞれの保護テープの特徴を明確には観察できませんでした。
その要因としては、
1,PVC板表面が鏡面仕上げのために密着しすぎて、保護テープ、面板ともに水の侵入がわずかで、その差が分かりずらい。
2,本来であれば腹部からの汗により内側からも水分の浸水があるがこの状態が実現出来ていない。
等が考えられます。
更に明確な効果や製品ごとの特長をお見せできるよう実験を続けたいと思います。
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