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2.22024
災害時、パウチが入手できない際の緊急対処法を考える
2024年1月1日の能登半島地震によりお亡くなりになられた方々には謹んでお悔やみ申し上げます。また被災された皆様には心からお見舞い申し上げます。
今回は地震等の災害時に、避難した先でパウチをはじめとしたストーマケア製品が無い時に、どう対処するかを考えてみたいと思います
天災は何処、何時降りかかってくるか誰にもわかりません。特に日本は地震多発国で、大きな揺れを感じたら安全な場所への避難が最優先となります。
このような緊急事態の際に、水や食料の日用必需品の手配が最優先となりますが、オストメイトにとっては最長でも5日程度しか持たないパウチをどう手配するかは、次の大きな問題となります。
ストーマを晒したままでは、一日中何も出来ません。
まずは、正規パウチが避難所で入手可能かどうかを確認してください。
1, ストーマ用品セーフティーネット連絡会(OAS)からの緊急時のストーマ用品無料提供サービス
OASは、日本国内のストーマ用品メーカーによって結成された団体で、市区町村の役場等が機能開始した際には、本セーフティネットが利用可能な場合がありますので、担当部署に問合せしてみて下さい。
これは家屋の倒壊等によりストーマ用品の持出しや、入手が困難なストーマ保有者、並びに入手が困難な避難所、病院等を対象に、災害発生から約1ヶ月間において、OAS各社の販売するストーマ用品を、地域のストーマ装具販売店を通じて無料提供されるサービスです。
詳しくは公益社団法人日本オストミー協会のホームページ上の”オストメイトの災害対策”を参照下さい。
また市区町村の自治体によってはストーマ装具の備蓄がある場合がありますので、これも要確認です。
日頃、緊急用に一定期間分のストーマ装具を避難時に持ち出せるよう準備されることをお勧めします。
2, パウチの手配が見込めない場合
しかしながら、本当にパウチが無い事態になった場合、どう対処したらよいでしょうか。
これらのセーフティネットが利用できる前の段階では、自らで急場を凌ぐしかありません。
様々な不便はありますが、代用パウチの装着などで正規パウチ入手まで待つ以外ありません。
一番大事なことは、1)ストーマを外傷や感染から保護する、2)排泄物の受け止め先を作る、ためにストーマを晒したままにしないことです。
以下は、あくまでも緊急時対策で、恒常的なパウチ利用法ではありませんのでご注意ください。
2-1, 非常時のパウチ交換
まずパウチの交換は、面板からの臭い漏れが始まった場合でも、汗等により面板の吸着力が落ちてきて自然にはがれる段階まで、我慢してでも出来る限り長期に使用され続けることをお勧めします。
以下の緊急代用パウチでも臭い漏れは発生しますし、ましてリムーバ(面板剥離剤)が手に入らない状況では、無理やり面板を腹壁から剥がすと、皮膚障害を起こすリスクが発生します。ストーマ周辺部に皮膚異常がある場合を除き、くれぐれも無理に剝がすことはやめるべきです。臭い漏れが始まってもなるべく正規パウチを出来る限り長期間使用した方が良いと考えます。
バンドエイド等の絆創膏が避難所にある場合は、これを面板周辺部に貼ることで、多少の臭い漏れ対策にはなります。
ちなみに現在市販されているパウチバッグはいずれも丈夫で、弊社実験では2週間程度であれば耐水性が損なわれることはありませんでした。
2-2, 非常時の代用パウチ
ここでは、着用していたパウチが寿命を終え、新たに代用パウチが必要な際の製作例を挙げます。この方法だけではありませんので一例としてお考え下さい。
【準備するもの】
1,スーパーマーケット等の買い物用プラスチックバッグ(中サイズ)
(もっと柔らかいビニール袋でも代用できますが、強度、耐水性等まちまちなのであまりお勧めしません)
未使用のバッグが理想的ですが、それすら入手できない事態では、飲料水でバッグ内部を洗浄した後ご使用ください。
2,ビニール紐:1m~1.2m × 2本(太さは10mm前後)
お腹に巻きつける用の紐です。細い紐は避けてください。腹部に食い込んでしまいます。
3,ハサミ(またはカッター、爪切り等)
プラスチックバッグ加工用です
① まずはバッグの手提げ部分をカットします。
② 5cm程折り曲げ、袋上部を2重化します。
③ その部分にφ5~10mmほどの穴を、表、裏それぞれ100mmくらいの間隔をあけて2つづつ開けて、代用パウチバッグは完成です。
この穴は、出来るだけ滑らかな穴にしてください。鋭利な角が存在すると、そこからバッグが裂ける可能性が有ります
④ 最後はストーマを上下に挟むように、図のように穴に紐を通し、腹部に巻き付けます。結び目は邪魔にならない位置で、お腹側面あたりが良いと思います。
バッグのストーマ周辺部に臭い漏れ防止のため、何らかのテープを張りたいところですが、リムーバが無い場合は、皮膚を傷つけないために全周にテープは貼らない方が良いと思います。
ガスが溜まった際のガス抜きも必要なため、バッグの周辺部の一部であれば、ズレ防止の意味でもバンドエイド等では代用できると思います。
〇 使用上の注意事項
1,袋の擦れ等でストーマを傷つけないよう、過度な運動、労働などを控えることが必要です。
2,水様便が一度に大量に排出される際は、その都度速やかに排泄物の排出処理が必要です。本代用パウチでは重量に耐えられないため、上側の紐がストーマに引っ掛かることの無いよう注意が必要です。
3,このパウチはクローズドタイプですので、一度排泄物がたまったら使い捨てとなります。
その際の排泄物の処理は、緊急避難場所等のトイレに軽く流した上でバッグは別の袋の中に硬く封じ、処分に際しては、特に衛生環境の維持に注意する必要があるため、現場スタッフ等の支持を仰いで下さい。
2-3, パウチホルダーを使った代用パウチ
弊社パウチホルダーを装着中の方の代用パウチの一例をあげさせていただきます。
この場合は、プラスチックバッグの手提げ部分をカットしたものを、ストーマの上から覆い、パウチホルダーの穴からプラスチックバッグを出して、ベルトを腹部に装着します。
なるべくバッグの周辺部を広く、腹部との接着面積をとることで漏れにくい安定装着が可能になります。
2-4, マスキングベルトを使った代用パウチ
弊社マスキングベルトを装着中の方の代用パウチの一例です。
これもパウチホルダーの使用方法と同様で、①プラスチックバッグの手提げ部分をカットしたものを、②ストーマの上から覆い、③プラスチックバッグ周辺部を何点か絆創膏で固定します。④その上からマスキングベルトを装着することで代用パウチとして排泄物の排出先として機能します。
ただし、パウチホルダーと違い、ストーマ周辺部だけをを硬く抑えることはできませんので、漏れには注意が必要です。あくまでも臨時対処策です。
3, 最後に
以上、緊急時の代用パウチ例をお伝えしましたが、このような事態を迎えることの無い様、祈るばかりです。
尚、本件に関し別のご意見、他アイディアがあれば、お知らせいただければ、ここで追加情報としてupさせていただきます。