Tips
2.172022
面板保護テープでストーマパウチの装着期間は延ばせる? -2
□ ストーマパウチの入浴用面板保護テープの比較実験 -2(保護テープの効果を実感)-
2-1, Pre実験2
前回のpre実験では面板とPVC板の密着度が高すぎて、膨潤による剥がれが観察できなかったため、次は表面が細かなエンボス仕上げになっているポリプロピレン板にテープ4種を貼り付け(写真2-1)、再度40℃のお湯の中で経過を見ました。
3時間を過ぎたところで防水性の無いスキナゲートが2枚とも剥がれてしまいましたが、他3種は30時間を過ぎてもやはり剥がれは観察できません。
腹部に貼り付けた状況と違い、動きもなく、内部から汗に晒されることもないため、この実験では防水/耐水性が見られたにすぎませんでした。
2-2, 面板貼付用基板
保護テープの効果を目視でも簡単に観察できるよう、面板を貼り付ける基板を様々試した結果、最終的に写真2-2のaのEVA(エチレン酢酸系ビニル)シートを選択しました。硬めのスポンジに似て、表面はざらっとしていますが、水、空気を通しません。ただし表面は薄く水を蓄えてくれます。
今回の実験の目的は、あくまでも保護テープを貼った部位と貼らない部位の面板の浸水具合の差を観察することですから材質の選択にはかなり自由度がありました。
ただEVAシートでは面板の裏側が見えないため、面板の寿命比較実験にも使用した穴あき(φ5mm)PVC板も使用します(写真2-2)。これで腹部からの汗にたっぷり晒された状況時の保護テープの様子を再現できるのではと考えました。
ちなみにエンボス構造を持つ柔らかい半透明シリコンシート(c)を見つけ、基板素材としては最適かと思い購入しましたが、どの面板もこのシートには全く接着せずボツとなりました。
2-3, 面板・保護テープの浸水実験1
EVAシートと穴あきPVC板のそれぞれに面板を貼り付け、その周辺部を保護テープで覆います。これらを水槽に浸し時間経過とともに保護テープの無い部分の面板周辺部の浸水具合の差を観察します。
この実験では新たな2種類(④アルケアのデルマポアと⑤ニチバンのハイコロール)を含む5種類を使用します(写真2-3)。デルマポアとハイコロールは先の3種①~③と違い、滅菌処理が施されているため面板保護目的以外にも傷口の被覆等にも使用できます。
デルマポア、ハイコロール共にポリウレタンフィルム素材を使用し、伸縮性、透湿性、防水性を備えます。ハイコロールは接着面に溶けにくいハイドロコロイドを使用していることが特徴です。
写真2-4は浸水前の面板と保護テープの様子、写真2-5は浸水後64時間を経過した面板と保護テープの様子です。写真2-5の一番右列の写真は、PVC板を表側(パウチ側)から見た各保護テープの様子です。
また今回の水温は、浴槽ではなく室内実験としたため、室温と同じく15~20℃です。
浸水後の面板に変化が見え始めたのは16時間後あたりからで、穴あきPVC板のテープ両端からの浸水が認められました。30時間を過ぎるとPVC板に貼り付けた面板上の皮膚保護剤の吸水は飽和し、それ以降の様子は大きな変化もありませんでした。
経過観察メモ
●6時間後:全く浸水、剥がれ無し
●16時間後:保護テープの両端に浸水を確認。面板周辺部はいずれも浸水なし
●19時間後:穴あきPVC板で②ブレンダームの接水部が白濁。④デルマポアと⑤ハイコロールに一部剥がれを観察。EVAシートでは①~⑤とも全く剥がれなし。①~③の防水性は強い。
●21時間後:EVAシート上の④デルマポア、⑤ハイコロールでも浸水確認。②ブレンダームもわずかに浸水。
●30時間後:テープ無し部分と比較して、保護テープが面板周辺を保護している様子がよくわかる。
保護テープの耐水性ランキングは、
1位:①優肌絆、③3Mシリコンテープ(穴あきPVC板上でもテープへの浸水なし)
2位:②ブレンダーム
3位:④デルマポア
4位:⑤ハイコロール
写真2-5では④ハイコロールがハイドロコロイドの吸水により、ゲル化している様子が分かります。夏場や入浴時に腹部からのたっぷりの汗で晒された際を再現しましたが、30時間以上も水に浸かる状況はあり得ませんので、1パウチの装着期間を考えれば実験に使用した5種類の保護テープの耐水性は十分であると評価できます。
また、本実験の主目的であった、面板の浸水からの保護効果ですが、テープ内への水の侵入はわずかにありますが、それにより面板周辺部の浸水が発生するほどの水量の流入はブロックしていると言えます。入浴の際などは明らかに面板を保護してくれるテープ群だということが分かります。
2-4, 面板・保護テープの浸水実験1-2
センシュラ ミオ系の面板は、コンケーブも含めその透明な面板周辺部は特殊な皮膚保護剤が塗布されており、溶解/膨潤のいずれの現象も発生しません。これにより先の実験では保護テープや面板への浸水部の視認性が悪かった事を考え、もう一度EVAシートを使って溶解タイプの面板で実験してみました。
今回の実験で使用したパウチは、ダンサックノバ1フォールドアップ×3(以下ノバ1FU3)です。ストーマ孔周辺部が3mm程の厚みで盛り上がったもので、フラットなフォールドアップもありますが、こちらは面板表面が不織布で覆われているため浸水の様子が観察しずらかったため、このタイプとしました。
写真2-6では浸水前の面板、保護テープの様子と50時間後の様子を並べてあります。テープは前実験の配列と同じく、面板top部から時計回りに①優肌絆、②ブレンダーム、③3Mシリコンテープ、④デルマポア、⑤ハイコロールの順にそれぞれ5cm長で貼り付けてあります。
また各テープの貼付時に、中心のストーマ孔から見て右サイドを敢えて一度手で伸ばした上で貼り付けてあります。溶解タイプの面板では浸水部の視認性が向上し、浸水具合が良く観察できます。保護テープの無い部分では明らかに浸水により面板が吸水して白く変化している様子が分かります。
また吸水により膨張したことで、テープの両端から徐々に保護テープ下にも浸水が進行しました。今回の実験では浸水後5時間後から保護テープ無しの部分で浸水が確認できました。
① 優肌絆アルファ:テープ右側からの浸水が多く、これは浸水前に手で伸ばしたことにより、表面上にある微細孔が破れて防水性が弱まった結果と考えます。貼付の際には強く伸ばさないことが耐水性を維持するポイントだといえます。
② 3Mブレンダーム:浸水すると白濁します。50時間たったテープの周辺外側では指で剥がれが観察できました。しかしながら面板周辺部はしっかりと保護できています。手で伸ばした部分も収縮し、他の部分と同じ性能を保っています。
③ 3M(Micropore)シリコンテープ:剥がれもなくきちんと面板を保護できています。
④ デルマポア:吸水で透明になりましたが、しっかりと保護しています
⑤ ハイコロール:前回実験と同様にゲル化現象で剥がれが発生しました。経過写真で調べてみると、24時間を過ぎたあたりからテープ周辺部の剥がれが始まり出しました。
2-5, 面板・保護テープの浸水実験を終えて
パウチの標準的装着期間は2日~5日程度ですが、今回は膨潤タイプ、溶解タイプの2種類の面板で50時間以上も水槽の中に入れたままの実験でした。その結果を見てみますと、面板保護テープは、どの製品も入浴用としては十分その役割を果たすものであることが分かりました。
今回は保護テープによる耐水性を確認しましたが、面板用保護テープとしては、腹壁との相性や透湿性など他にも注目・検討すべきスペックが存在します。
次回は、面板専用保護テープとして製品化されたテープ群を試料とした実験を行ってみたいと思います。
■ オストメイト向けTips 一覧へ戻る
■ HOMEページTOPへ戻る
面板保護テープでパウチの装着期間は延ばせる? -3-へ